第 2 話
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家へたどり着いて初めて、ここ3日間自分が何もしていなかったことに気付いた。積み上げられた薪は既に残り僅かになり、食糧も底をついていた。
「仕方がないか」
それでも囲炉裏に火を灯し、薪を燃やして湯を沸かした。
暖かくなった部屋で耶邦はその少年を風呂にいれた。
冷たかった身体は熱い湯に触れると次第に熱を吹き出してくる。
白かった頬に赤みのさすのを認めて、耶邦はホッと胸を撫で下ろした。
さして上等でもない布団にその少年を横たえさせて、耶邦は改めて彼の様子を覗き込んだ。
日の光を知らぬかのように白く透き通った肌は、耶邦自身も一瞬見間違えたように少女のそれのようであった。おそらく力仕事などしたことのないだろう手足は華奢で、握り締めると折れてしまうのではないかとの錯覚さえも起こさせた。
神官かその見習いであろう服装は、果たしてどこの村の者であろうか判別のできかねるほど汚れ、痛んでいた。多分水に流されている途中、あちらこちらにぶつかったり引っかけたりしたのであろう。その割りには身体に残る傷が僅かであったのは不思議なほどだった。
耶邦はそっと手を伸ばし、その白い頬に触れてみた。蘇った熱は激しいほどに彼の全身から溢れ出ていた。それがかえって、生きていることの証しであった。
――何としても助けたい。
思いは強くなるばかりだった。
ふと少年が目を開いた。熱で潤み、はっきりと焦点の合っていない瞳に耶邦は、差し延べたままの手を引っ込めることもできなくなった。
すぐに少年の視線は目の前にいる耶邦を捕らえた。
「……だれ…?」
ひどくかすれた痛々しい声が、強ばった耶邦の身体を和らげた。
なるべく落ち着かせるよう、安心させるよう耶邦は有りったけの笑顔を見せた。
「オレ、耶邦ってんだ。ここはオレんち。お前が川に流されて来たの、助けたんだ」
短く言った耶邦のこの言葉の終わらぬうちに、彼は再び目を閉じていた。
ほんの僅かだけ呼吸が柔らかくなっていた。
* * *