Stay for You -番外-
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「よぉ、まだこんな所にいたのか」
楽しそうに入ってきたのは東藤だった。片手を上げて、至極上機嫌の様子だった。
「てめーかよっ、俺を犯罪者に仕立てやがったのはっ」
怒鳴って食ってかかろうとする弘毅は、しかし周囲にいた警官に簡単に取り押さえられる。
ここは警察署の取調室だった。弘毅は件(くだん)の罪での取り調べ中だったのだか、そこへ中央からわざわざ出向いてきた東藤が顔を見せたのだった。
「言ったたろう。真雪の保護者は私だと。その私に黙って連れ出せば立派な誘拐だ」
返せない弘毅。確かに東藤の言う通りではある。だが、真雪は峻なのだ。こんな理不尽な話はないと言い張る弘毅だったが、弘毅の言葉を信じてくれる者は誰もいなかったのだった。
「じゃああの男…真雪のオヤジってのは…」
「そうそう。私も最近知ったのだが、真雪のご両親は健在で、君を殴った彼が実の父親だそうだ」
「はあ〜〜〜? 真雪は親はいないって言ったんだぞ。何でそんな嘘を…」
「さあな」
面白そうに、しらを切る。
「真雪は? 真雪に会わせろよっ」
弘毅は再び東藤につかみ掛かろうとするのを、取り押さえられる。
「彼は両親の元へ連れ戻されることとなった。未成年だからな、当然だ」
「!」
「司令部としても残念だが、あと数年して成人すればまた戻って来てくれよう」
「成人…?」
弘毅は自分を取り押さえる警官をはねのける。
「冗談じゃねえっ。そんなに待ってられるかっ」
「ほう」
東藤はにやにや笑う。頭に血ののぼった弘毅はそれに気づかない。
「やっと捕まえたのに、やっと取り戻したのに、また…冗談じゃねえっ!」
叫んで、弘毅は東藤を突き飛ばして取調室を飛び出す。慌てて追いかける警官を止めたのは東藤だった。
「未成年誘拐に強制猥褻と脱走。どれくらいぶち込んでいられるものかな」
嬉しそうに一人ごちた。
* * *