Stay for You -番外-

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 ドンドンドンドンッ!」

 ドアを激しく叩く音とともに。

「お客さんっ、どうしたんですかっ? 大丈夫ですか?」

 声が聞こえてきた。

「お客さん、お客さん」

 容赦ないノックの音と、怒声にも似た呼び声に、弘毅は思いっきり舌打ちする。

「ジャマすんじゃねぇよ」

 ここからが一番いい所だと言うのに。と言うか、ここで止められるわけがないだろう。弘毅は心の中で思いっきり毒づいた。

「弘毅…」

 真雪が心配そうに見上げてくるのを、弘毅は平気な顔で返す。

「無視だ、無視。続き、しようぜ」

「でも…」

 ノックの音はやまるどころか、一層激しくなる。

「お客さん、ここを開けてください。お客さん! 松田さんっ!」

 弘毅は思いっきり握りこぶしをして、額に青筋を立てる。

「馬に蹴られやがれ」

 憎々しげに言って、真雪の上から降りる。頭に血が登ってはいるものの、しまうものだけはしまってからドアを開けた。

「何の用だ? 俺たちゃ、休んでんだっ」

 怒鳴る弘毅を突き飛ばすように押しのけ、入ってくる影があった。見やると見知らぬ男だった。宿の従業員ではなかった。

「真雪ッ!」

 真雪を見るなり、その男は立ち止まる。弘毅はその彼を捕まえる。

「何だよ、あんた」

 ギロリと睨まれる。

「お前か、私の息子を誘拐して連れ回していると言うのは」

「はあ?」

 男の指さすのは真雪。その真雪は実際、全裸で、自分のシャツで慌てて前を隠している始末だった。

「貴様っ! 息子に何をしたっ?」

 弘毅は胸倉を掴み上げられる。

「息子って…こいつは俺の…」

 最後まで言う間もなく弘毅は殴り飛ばされた。そのまま、後方の真雪の座るソファの足元まで転がって行く。

「お父さんっ」

 真雪の声がした。その声に振り返ると、真雪は弘毅と男とを困ったような顔で見比べていた。弘毅と目が合うと、顔を引きつらせる。

「え…えっと…」

「お前、親はいないって言ったよなっ?」

 弘毅は真雪の肩を取ろうとして、いきなり背後から両腕を掴まれた。見上げると制服姿の警察官が二人、両側から弘毅を取り押さえるように掴んでいた。

「松田弘毅。未成年誘拐及び強制猥褻の罪で署まで来てもらおう」

 ずいっと、引き立てられる。

「ちょっと待て。こいつは俺の恋人だっ」

「理由にもならんわっ! 大の大人がこんな小さな子ども向かってこんな淫らな行為を行っておいて」

 警官は弘毅の言葉など聞く耳を持たなかった。弘毅は左右から引っ立てられ、引きずられる。

「真雪、真雪ッ、何とか言えよっ、真雪ー!」

 しかし真雪は叫ぶ弘毅をオロオロしながら見送るだけだった。



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