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目を覚ました時、一番に飛び込んで来たのは、心配そうな表情をしたあの子どもだった。
「あ…」
かける言葉が見つからないのか、弘毅が目を覚ますと一転、ホッとしたような色を浮かべる。余程心配していたのだろうかと、内心で少しうれしく思いかけて、いきなり思い出した。
「峻っ!」
叫び様に跳び起きて、クラリと目眩がした。弘毅は頭を抱えてそのまま突っ伏す。
「峻はどうしたっ?」
唸る弘毅に、彼は複雑な色を浮かべる。
「再生して、逃げたよ」
その言葉にホッと息をつく。そんな弘毅に、遠慮がちに声がかかる。
「まだ横になっていた方がいいよ」
「お前なっ」
そっと手を触れようとする彼を振り払うように、弘毅はその手を叩く。ピクリとして、子どもは身を引いた。
「ゴメン、頭、痛い?」
「いてーも何も…チクショウ…」
それでも何とか上体を起こした。
落ち着いて辺りを見回した。ここはどこだろうかと思いかけていると、横から声がかかる。
「組織の管轄の宿舎。三澤さんに送ってもらったの」
そう言えばホテルのようでも、病院のようでもない。殺風景な部屋にはベッドとテーブルがあるだけだった。
「組織? 俺は追放の身だぞ」
「そうなの? でも東藤司令官が連れて来いって」
「あぁ?」
弘毅は子どもを睨むように見やる。
目付きが悪いと昔から定評のある弘毅だった。脅えるものと踏んだのだが、相手は一向に怖がる様子も見せないどころか、にっこり笑顔を浮かべる。
それに気抜けする弘毅。
「俺はあの野郎の顔なんて見たかねぇんだ」
「またそんなこと言って」
含み笑いを込めたその言葉に、弘毅は一瞬違和感を覚える。
「相手は上司なんだから、きちんと命令には従っておいた方がいいと思うよ」
知ったかぶりの口調に、弘毅はムッとする。