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「お前…っ」

「何をしてるんだよ。相手は怪物だ」

 怒鳴る子どもは、しかし弘毅を振り向かず、クローン人間の方を睨んでいた。ゆっくり近づいてくるクローン人間。

「ジャマ、しないでよ」

 両手の平を握り締める子どもは、何も返さずクローン人間を睨む。平気そうな表情をしているが、その額には玉のような汗が浮かんでいた。

 弘毅を背にかばうように前へ出る。まるで近づくクローン人間から弘毅を守るかのように。

「君の超能力なんて怖くないよ。だってすぐにコウキがボクを人間に戻してくれるから」

 言って、再び弘毅に腕を伸ばしてくる。

「ね、コウキ」

 と、その時。

 バンッと言う銃声とともに、クローン人間の身体が真横に吹き飛んだ。身体の一部分――腰から腹へかけて粉々に砕け、再び赤い鮮血が飛び散った。

 振り向くと、もう一台ジープがあった。その横でライフル銃をかまえている人物と、立ってそれを指示している見覚えのある男がいた。

「峻ッ」

 弘毅が駆け寄ろうとするのを、また阻止される。

「ダメだっ」

「どけっ」

 払いのけようとするが、それよりも速く子どもの小さな拳が弘毅の鳩尾に食い込んだ。

「う…」

 気を失わないまでも、弘毅はその場にうずくまる。

 バチッ。

 と、弘毅の眼前でクローン人間の全身から炎が吹き上げた。

「う…わああぁぁっ」

 悲鳴が上がる。

「峻―――ッ」

 炎に包まれる峻の姿をしたクローン人間。その顔が炎の中で崩れて溶ける。峻の失われて行くその様を目の当たりにして、弘毅は鳩尾を押さえながらも炎の中へ飛び込んでいこうとする。

「ダメだっ」

 止めようとする子どもの手を振り払う。

「峻ッ」

 炎の中に飛び込もうとした寸前、弘毅は後頭部に鈍い痛みを感じた。そしてそのまま視界がぼやけて、意識が遠のいていった。

 遠くで、自分を呼ぶ峻の声が聞こえたような気がした。


   * * *



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