第 1 話
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「黙れっ!」
寛也は手に触れた石ころを掴んで、思いっきり静川に向けて投げ付けた。それを避ける静川の隙をついて、寛也は彼につかみ掛かった。
「何をするっ?」
「言えよ、ジュンはどこだ? お前ら、あいつに何かしただろう?」
「放せっ」
寛也を跳ね飛ばして、静川は立ち上がる。
「相変わらず威勢がいいな、寛也」
「…ジュンの心波を感じない」
「当たり前だ。もうこの近くにいないからな」
睨む寛也に、静川は鼻で笑う。
「お前らはもう、何の手出しもできない。精々、人間の味方でもしておくんだな。どうせ用がなくなれば…」
「消えろっ!」
怒鳴って、話を聞こうとしない寛也から、静川は仕方無さそうに翔に目を移す。
「葵翔、お前はどうする?」
突然に振られて、翔は目を見張るが、すぐに返す。
「くどいよ」
「そうか…。まあいい。いつか分かるさ。…露(あきら)、帰るぞ」
静川は寛也と自分ま間に割って入ったままの少年に声をかける。露と呼ばれた彼は、少し不服そうな表情を浮かべる。
「でも、こいつら…」
「放っておいても、こいつらには何ができるでもない。それよりも橘(たちばな)翁の方だ」
「…分かった」
短く言葉を交わして、露は静川の袖を掴む。途端、二人の姿はかき消えた。現れた時と同じで、それは、まるで手品か何かのように、一瞬のことだった。
今まで目の前にいた人間が忽然と消えたことに、翔は驚いて目を見張る。
「な…何、今の…」
「テレポートだ。あいつ…水穂(みずほ)露はテレポートとサイコキネシスを使う凄腕の超能力者だ。静川の方は、電撃を使う人間ボルタ電池野郎」
「はあ?」
どこの世界の話かと半分呆れる翔に、背を向ける寛也。
「ったく…化け物だぜ、二人とも」