第 1 話
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「翔、俺と一緒に来る気はないか?」
「静川っ」
寛也が立ち上がり、駆け寄ろうとするのを制したのは、ずっと黙ってこの様子を観察していたもう一人の少年だった。彼は、翔達と寛也の間に割って入ってきた。
「選択権は本人にある。お前の口出しするところじゃないだろ、結崎寛也」
寛也の舌打ちが聞こえた。
「どうする? 翔」
静川と呼ばれたその男に、翔はまっすぐ目を向けた。
「聞いていいですか?」
「ん?」
「あの町中での火災、あれは誰がやったんですか?」
何を聞いてくるのかと思ったのか、静川はわずかに苦笑を浮かべながら答えた。
「ああ、あれか。あれは俺の妹だが?」
「何人殺したんですか?」
その問いには、さすがに詰まった様子の静川。その彼を見上げたまま、翔は決意したように、きっぱり返した。
「僕は行きません」
「お前はまだ何も知らないから…」
「罪のない人を殺しても尚、正しいなんてこと、僕は信じません」
翔の真っすぐな瞳から目を逸らすでもなく、静川は低く言った。
「その言葉、俺も昔、言ったことがある」
「え?」
その表情は、まるで読み取れなかった。
「俺と同じだけのものを知った時にも、その言葉が素直に言えるものかな」
二人の会話に、寛也が口を挟む。
「静川、選択権が本人にあると言いながら、何故ジュンをさらう? 葵杳を狙うんだ?」
「言わなかったか? 葵杳は、救出しただけだと。お前の弟は俺達の邪魔をするからだ。ま、お前と離している以上、何もできないただのガキだがな」
舌打ちする寛也。それを見下ろして。
「…寛也、本来なら俺達は手を組んで当然なんだぞ」
「うるさいっ!」
怒鳴る寛也。唇をかみしめて、何故か辛そうな表情を浮かべる。
「人の中に俺達の求めている者は、決していないんだ。それでもお前は人につくと言うのか? そこまで、お前達一族の血は人に染まってしまったのか?」