第 1 話

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「あんなすごい力があるんだったら、わざわざ助けに行かなくても…」

 玄関を出ると、外はまだ薄暗かった。町はまだ眠っていた。

「なら、お前は帰れよ」
「あ、ちょっと…」

 何かと不平を漏らす翔に呆れたのか、寛也は歩調を速める。慌ててそれを追いかける翔。

 ふと、周りの景色に見覚えがあることに気づいた。

「あれー。ここって学校の裏じゃないか」

 家と家の隙間から、翔の通う高校の校舎が見え隠れしていた。

「お前、ここの生徒か?」
「うん」
「ふんっ、後輩か」

 寛也は差して興味なさそうに呟く。

「ね、結崎さん。杳兄さん達、どこに行ったか知ってるの?」
「いや…」
「だったら、どうやって…」

 知らずにあてずっぽうで捜そうとでも言うのだろうか。

「ジュンが目を覚ました。あいつのパルスを辿っていく」
「な、何?」
「勘だよ」

 聞き馴れない言葉に首を傾げる翔を振り返って、寛也は初めて笑って見せた。その表情に、翔は思わずうつむく。

 何だろうか、この自信は。こんなにも繋がっていられるなんてと。自分は兄の杳が何を思っているのかさえ分からないと言うのに。

「坊主?」

 翔の様子に何を感づいたのか、寛也がその頭を掴んでガシガシかき回す。

「もう、やめてよっ。坊主でもないしっ」
「まあ、いいじゃねぇか、どっちでも。とにかく、行こうぜ」

 寛也の声に少しだけ元気づけられて、翔は顔を上げた。


   * * *




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