第 1 話
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「何なんだ、一体…」
「戦争でもおっ始まるのか?」
大の大人の言葉とは思えないその会話を尻目に、翔は人垣を抜けていって、思わず立ち止まった。
足元に飛び散った破片に見えたのは、あのリョウと呼ばれた人の乗っていたバイクに描かれていたマークだった。
「兄さん…まさか…」
翔は火柱に向かって駆け出した。が、すぐにその腕が掴まれた。
「こら、坊主。危ないぞ」
「放してっ、兄さんが…!」
「兄さん? さっきの族の中にでもいたのか?」
はっとする翔。
「とにかく来い」
「放し…」
「いいから来るんだ」
翔は引きずられるようにして、路地へ押し込まれた。むっとして相手の顔を見ると、自分と同じ年くらいの少年だった。
「警察なんか来てみろ。俺たちゃ、取っ捕まっちまうぜ。ふんっ」
言って、辺りに目を配る。その眼は油断ならない色をしていた。
「ね、教えてよ。あれ、一体何が…」
「知らねぇよ、俺も。ただ、何か上から…」
「上?」
翔は空を見上げた。明るい夜の町では、星のひとつも見えなかった。
「ああ。上から何か光みたいなものが落ちてきたかと思うと、いっきなり爆発して、あの通りだ」
「…光…?」
「ああ、赤く光った。一瞬だけどな。それよりお前、中学生か? 学ランなんか着て」
「高1ですっ」
どうせ見た目の身長で判断しているんだと思った。失礼な話だ。
「ヒロッ」
と、背後に別の気配を感じた。振り返ると、火柱を背にした影が立っていた。その影は人を担いでおり、路地へ入るとその担いでいた人を地面に降ろした。
慌てて駆け寄る「ヒロ」と呼ばれた少年に続いて、翔も何事かと近づいていった。
「大丈夫か、ジュン?」
「うん、何とかね。でも彼しか助けられなかった」
「仕方ない。普通に、即死だろ」
二人の会話を耳にしながら、翔は横たわる人物の顔を覗き込んだ。その顔に、はっとする。