第 9 章
守るべきもの
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 聞かれて寛也は一拍あって、思い出したように机の上のプリントの束を叩いた。

「休んでた間のプリント、ジュンが持って行けってうるさいから持ってきてやったんだ」
「そんなもの、翔くんに渡しておけばいいじゃない」

 言われて、それもそうだと思いかけて、翔の言葉も思い出す。

「あー、あのチビからも伝言。転校の手続きが残ってるから遅くなるってよ。んじゃ、用が済んだから俺も帰るわ」

 それだけ言って、寛也はドアへ向かう。

 ノブに手をかけたその寛也の後頭部に、枕が命中した。

「いてー。何すんだっ」

 即、投げ返そうとして、そこに不機嫌そうな表情の杳を見た。で、思わず、投げ返す期を失った。

「オレのこと、心配して来てくれたわけじゃないんだ?」

 聞かれて、寛也は言葉に詰まる。

「いいよ、帰れよ」

 プイッとそっぽを向いてしまう。その杳の膝に、枕をポンと返して、寛也は一度、深呼吸する。

「悪かったな。あんなケガさせて。全部俺の所為だから…心配は…すげぇした」

 ベッドに腰掛けた杳の前へ立って、見下ろす。

 杳は寛也の言葉に目をまるくして、それからふわりと笑った。

「ありがと、ヒロ」

 こんな顔もするのかと、思わず見とれてしまって、慌てて目を逸らす。

 向いた窓の外に見えたものに、話題を逸らした。

「あれ、お前のバイク?」

 庭の隅に置いている、見覚えのあるバイク。杳はすぐに話に乗ってきた。

「うん。カッコイイだろ? 免許も16になってすぐに取ったんだ」
「お前、誕生日、いつ?」
「2月だけど?」
「…免許取りたてじゃねぇか」

 確か数日前には、車の運転もしたことがあると言ってなかっただろうか。

「免許は取りたててでも、運転歴は長いから」
「それ、無免許って言うんだぞ」
「うん」

 悪びれた様子もないのに呆れる。

 が、ちょっと興味もあった。


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