第 9 章
守るべきもの
-5-
4/9
聞かれて寛也は一拍あって、思い出したように机の上のプリントの束を叩いた。
「休んでた間のプリント、ジュンが持って行けってうるさいから持ってきてやったんだ」
「そんなもの、翔くんに渡しておけばいいじゃない」
言われて、それもそうだと思いかけて、翔の言葉も思い出す。
「あー、あのチビからも伝言。転校の手続きが残ってるから遅くなるってよ。んじゃ、用が済んだから俺も帰るわ」
それだけ言って、寛也はドアへ向かう。
ノブに手をかけたその寛也の後頭部に、枕が命中した。
「いてー。何すんだっ」
即、投げ返そうとして、そこに不機嫌そうな表情の杳を見た。で、思わず、投げ返す期を失った。
「オレのこと、心配して来てくれたわけじゃないんだ?」
聞かれて、寛也は言葉に詰まる。
「いいよ、帰れよ」
プイッとそっぽを向いてしまう。その杳の膝に、枕をポンと返して、寛也は一度、深呼吸する。
「悪かったな。あんなケガさせて。全部俺の所為だから…心配は…すげぇした」
ベッドに腰掛けた杳の前へ立って、見下ろす。
杳は寛也の言葉に目をまるくして、それからふわりと笑った。
「ありがと、ヒロ」
こんな顔もするのかと、思わず見とれてしまって、慌てて目を逸らす。
向いた窓の外に見えたものに、話題を逸らした。
「あれ、お前のバイク?」
庭の隅に置いている、見覚えのあるバイク。杳はすぐに話に乗ってきた。
「うん。カッコイイだろ? 免許も16になってすぐに取ったんだ」
「お前、誕生日、いつ?」
「2月だけど?」
「…免許取りたてじゃねぇか」
確か数日前には、車の運転もしたことがあると言ってなかっただろうか。
「免許は取りたててでも、運転歴は長いから」
「それ、無免許って言うんだぞ」
「うん」
悪びれた様子もないのに呆れる。
が、ちょっと興味もあった。