第 9 章
守るべきもの
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 翌朝は思いっきり寝坊をしてしまった。

 かなり疲れていたのだと、潤也は目覚まし時計の時刻を見て思い知った。

 8時15分だった。

 それから寛也をたたき起こし、猛スピードで湯を沸かしてみそ汁を作った。ご飯はちゃんと夜のうちにセットしていたものが炊き上がっていて、それに漬物と味付け海苔を添えて、取り敢えず寛也に差し出した。

「以前と何にも変わらないじゃないか…」

 潤也は起きて15分で力尽きそうだった。

 寛也はただ食べるだけ食べると、後片付けをすることもなく、とっとと学校へ向かう。それを慌てて追いかけた。

 学校までの距離、走ってわずか2分。ボロアパートとは言え、ここに住んでいて良かったと思う瞬間だった。

 と、アパートの階段を降りて、寛也が立ち尽くしているのが目に入った。

「何やってるの。遅刻するよ」

 ポンと背を叩くと、寛也がボソリと聞いてくる。

「杳のバイク、ここになかったっけ?」
「多分、昨夜来た時に翔くんが持って帰ったんじゃない?」
「そっか…」

 ひとつずつ、ひとつずつ、元に戻っていく。二人での生活も、早くも測量を始めて建設計画も進んでいる校舎も。

 杳が側にいた気配も、消えていくのだ。

「ほら、行くよ。チャイム、鳴ってる」

 寛也の腕を引っ張って、潤也は駆け出した。

「お、おう」

 それに従って、寛也も校門へ向かう。

 駆け込みをしている他の生徒達に混じって、二人は校門の中へ滑り込んだ。


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