第 9 章
守るべきもの
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「記憶を…消す?」
ようやく自宅に帰り着いて、人心地ついている時だった。突然言い出した潤也の言葉に、寛也は聞き返した。
「そうだよ。今回のことに関わった人間のね。と言っても、わずかだろうけど」
「じゃあ、あいつも…?」
寛也の言わんとする人物が誰なのか、潤也にはすぐに思い当たった。
「ケガを完治させて傷痕も消してからになるから、多分、最後になるだろうけどね」
言いながら、潤也は寛也の表情をうかがい見る。
杳にとって、竜達の記憶イコール自分達の記憶である。出会ったところから、全てすっぱりと消してしまうと言うことなのだ。
「でも、あいつは別にいいだろ? こんなに側にいるのに」
翔とは同じ家に住んでいるし、自分達とは同級生だ。すぐに思い出してしまうか、ばれてしまうか。その可能性は高いし、何があっても守っていけるのではないかと思った。そう言う寛也に、潤也はにべもなく返す。
「あんな目に会わせておいて?」
「それは、お前が…」
「一番危険なんだよ、杳が。何にでも首を突っ込んでくるし、およそ関係ないのに、人の心配ばかりして、自分の身を顧みないで飛び込んでくるし」
少し怒りのこもった口調は、やはり、同じように心配症なのだう。
「だけど、絶対に嫌がるぞ。家出して姿をくらましたりするかも」
十分に有りえそうだった。
「だから、言わない」
そう言う潤也の言葉に、寛也は眉をしかめる。
「いいのかよ、お前」
「え?」
意外そうな表情が返ってきた。なので、単刀直入に言ってやった。
「お前の初恋の奴って、杳だったんだろ?」
「な、な、な、な、何言ってんだよ、ヒロはっ」
図星なのが丸分かりだった。つい今まで偉そうに凪面をしてしたのが嘘のようだった。真っ赤になってしまった弟を楽しそうに見やって、ふと、自分も寂しく思っているのに気づいた。