第 9 章
守るべきもの
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ドスン、ドスンと地響きを立てて落下してきた二体の竜に、駆け出そうとする杳を慌てて止める寛也。
「ダメだ。ここにいろ。これ以上近づくな」
「どうして? 潤也も翔くんも怪我してんじゃないの?」
「だからだ」
じだんだを踏む杳を、両肩を掴んで、くい止める。
「本当に危険なんだ。あいつらでさえあんな状態なのに、お前が行ったら即死だ。だからもう…ここから出て行ってくれ」
自分も潤也の様子が気になるが、それよりもこの無謀な杳の方が心底心配に思えた。
こんな、人間の身一つで飛び込んできて、無茶過ぎる。
「いやだ」
寛也の渾身の願いも、杳に一言で返された。
「そうやっていつも置いてけぼりだ。さっきだって、道端に放置して行くし。ここまで来て、何でのけ者にするのさ?」
「危険だから言ってるんだろっ!」
思わず怒鳴ってしまって、じっと自分を睨み上げている杳と目が合った。
自分も大概、好き勝手にやりたい放題をする性格だが、杳相手だと何故か常識的になってしまうことに気づいた。
「そんなの、百も承知だよ。今更何言ってんの?」
不機嫌な声で言う杳は、プイッとそっぽを向く。
「だからヒロに頼んでんじゃない。ばかヒロ」
「んだとぉ?」
思わず言い返しかけて、ふと見やった杳の白い横顔が少し紅潮して見えた。
すごく機嫌が悪くなっているのではないかと思った。思ったが、自分も引くことができず、睨み合い状態だった。
「やだなぁ、こんな所で肩を抱いて見つめ合ってるなんてね」
あらぬ方向からとんでもない言葉が飛んできて、寛也は慌てて杳の肩を掴んでいたままの手を放した。
「ジュン?」
たった今、天空で血飛沫が飛び散ったのを見なかっただろうか。
しかし、そこに立って歩いてくる潤也からは、どこにもその痕跡は見いだせなかった。
さすがに治癒力は他に優るなと、寛也は思った。
「怪我は? 今さっき…」
心配そうな表情の杳に、潤也は苦笑する。
「まだ、心配してくれるんだ?」
「当たり前だろ」
そう言いながらも、自分には一定の距離を保とうとしているのが見て取れる。
心配と信頼はやっぱり違うのだと、そう思う気持ちに蓋をした。
そして、杳の正面に向き直る。
「杳に頼みがある」
ふいに真剣な表情になった潤也に、杳が心持ち後ずさるのを、見て見ぬフリをする。
「地竜王の姿は、見えているよね?」
念押しするように聞く潤也に、杳はうなずく。
その言葉に初めて寛也は気づく。杳に竜達の姿が見えているのだと言う事実に。
これまで一緒にいて気づかなかったと言うのも間抜けな話であるが、思い起こせばそうだ。
杳は初めから自分達の――竜の姿が見えていたのだ。
本来、人に見える筈のないものが。
表情から考えが丸分かりの寛也を横目に、潤也は続ける。
「彼をなだめてきて欲しい」
天上で舞う地竜王を指さして。