第 9 章
守るべきもの
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「なんて奴らだ」
舌打ちして寛也は天を見上げた。
そこに、二頭の巨竜が舞っていた。
天の名を持つ竜と地の名を持つ竜、共に他の竜神達よりも一回り大きな身体を持つ。光に反射して、それぞれに金と銀の鱗を光らせていた。
突然覚醒したのは自分の時とさほど変わらないと言うのが、他者のそれを始めて目の当たりにした寛也の感想だった。切っ掛けは、今足元に転がって気を失っている里紗なのだろう。
覚醒すると同時に竜体化した紗和と、それを追うように天へ駆け昇った翔のお陰で、竜の宮は全壊状態だった。
慌てて里紗を抱えて、外へ飛び出すのが精一杯だった。
「もう、必要なくなったみたいだね」
言って里紗の額に手を当てるのは、一緒に宮を脱出した潤也だった。その額に薄く張り付いていたものを剥ぎ取っていた。
「君はお役御免だよ」
そう、気を失ったままの里紗に言ってから、聖輝を振り返る。
「静川さん、彼女の治癒を頼める?」
まるでそれまでのわだかまりが嘘だったかったかのように、自然な口調で言う潤也に、聖輝はうさん臭そうな目を向けた。
「自分でしたらどうだ?」
「僕にはまだやることが残っている」
「おいっ」
寛也はその潤也の前に回り込む。
「お前、分かってんのか? 自分のやってることが」
思わず胸倉を掴み上げようとする寛也の手を、潤也は軽くかわす。
「分かってるよ。始めから、僕は…」
言って、空を見上げる。
その先に舞う二頭の竜の姿があった。
巨体と巨体がぶつかり合う度に、地が轟き、天が稲光を発する。それはまるでSF映画のようで、目の前で起こっていることが現実とは思われないような空間だった。
「僕の参戦は、ヒロを見つけだすことと……杳を守ることだったから」
「じゃあ、何でアイツに加勢するんだよ?」
「…気づいてないんだ、ヒロも。あんなに側にいたくせに」
その言葉の内容よりも、少し嫌みの籠もった口調に、らしくないと思う。が、これが覚醒した風竜のものだと思い直して、やり切れない気持ちになる。
その寛也の心情を読み取ってか、潤也は口調をわずかに変える。
「言ったよね、もう一度あの戦いを繰り返すって。対天竜王戦を」
「?」
驚く寛也に、潤也は苦笑を浮かべる。