第 8 章
竜の宮
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「結崎、刀っ」

 振り下ろそうとする里紗の腕を押さえて露が叫ぶのを、寛也は慌てて駆け寄り、その手から刀を取り上げようと腕を掴んだ。その時。

 バリバリ…。

 里紗の身体から、高圧電流のようなものが流れ出した。

「うわあっ」

 思わず里紗の手を放す寛也。露も慌ててその身を撥ね除けた。里紗は床に転がるが、すぐに起き上がる。

「何だ…今の…」

 寛也は自分の手のひらを見つめる。静電気のような軽いものではなかった。火花すら見えた。

 その間に里紗は床に落ちた刀を拾い上げた。袖から赤く腫れた手首が覗いた。今、寛也が掴んでいた場所だが、火傷のように見えた。が、痛がっている様子もなく、色のない目を寛也に向ける。

「俺がやったのか…?」

 無意識に炎の力を使ったのだろうか。いや、そんな覚えはない。むしろ今のは、里紗自身から発せられた電流のように思えた。

 里紗は刀をゆっくり振り上げて、一歩、寛也に近づく。

 とにかく、あの刀だけは取り上げないと、危なっかしくて仕方がない。幸い、操られている為か里紗の動きは緩慢だった。寛也は再び自分に向けて振り下ろされた刀を避けて、里紗の手を、刀のつかごと掴む。

 そして、刀だけをその手から抜き取ろうとして、また電流が流れた。予期していた為、先程よりは驚かず、握り締めた里紗の手を外そうとする。

 が、しっかり握った手はなかなか解けなくて、手間取る。その時間はほんの数秒だったが。

「待て。放せ、結崎っ」

 叫び声とともに、寛也は手を叩かれた。とともに、後方へと押しやられる。弾みで床に尻餅をついて、寛也はその相手を見上げる。

「何するんだ、静川」
「ばかか、お前は。相手を見てみろ」

 言われて寛也は里紗の方へ目を向けて、ギョッとする。寛也が手を放したことだけでバランスを崩してその場へ倒れ込んだ里紗は、その手を真っ赤な血で染めていた。

「な…っ?」
「お前らに耐えられる衝撃でも、あの子は人間だ。皮膚が裂けたんだろう」

 しかし、里紗は一向にその痛みに表情を変えることはなく、立ち上がる。ポタポタと手から滴のように血が滴っていた。

「残酷なことを…」

 呟く聖輝。寛也は部屋の隅で傍観している潤也を睨む。それに気づいて、潤也は肩をすくめる。

「僕に何とかしろと言われても無理だからね。やっているのは竜王だから」

 その言葉に、ムッとする寛也。立ち上がり、里紗を避けて潤也に近づく。

「お前も共犯だろう」

 怒鳴って、潤也の襟首を掴む。


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