第 8 章
竜の宮
-2-
1/4
山の中へ入って、茅晶は感づかれないように、随分遅れて寛也達を追いかけていた。
竜達の匂いを追って、飛鳥の山を奥へと分け入る。
そこで、思いがけないものを見つけた。
「杳くん…」
道端に、杳の横たわる姿を発見したのだった。
危うく通り過ぎるところだった。竜の気配を追っているのでなければ、多分、気づかなかっただろう。
人や獣が側に寄れないように、強い結界が張られていた。
一見して、竜の仕業だと分かる。しかし、何故こんな所に…。
触れようとして、電流のようなものが指先に伝わった。。
「いたっ」
それは、何者も近づけないように、杳を守った結界なのだと気づいた。施したのは竜王だろうか。
「杳くんっ、杳くんっ!起きなさいよっ」
茅晶は怒鳴ってみた。が、術をかけられている為、目覚める様子はなかった。取り敢えず、ここに放っていく訳にはいかないと思った。竜の結界ならば、竜の力のある物で破れはしないだろうか。
茅晶の手に、竜剣が現れた。それは、銀色の刀身をきらめかせて、振り上げられた。
「起きないと、まっぷたつよっ」
思いっきり、杳に向けて振り下ろした。
剣が結界に触れた途端、火花が散り、再び激しい電流のようなものが流れる。
「きゃっ」
思わず剣を手放す。カランカランと音を立てて、竜剣は足元に転がった。
電流の通った手のひらが熱くなり、茅晶は思わず手のひらを見つめる。
「いったー」
再び剣を拾おうとして、ふと、杳が目を覚ましているのに気づいた。
「あれ…?」
ゆっくり起き上がる。結界は破れてしまったのか、杳はごく普通に起き上がった。
「ここ、どこ…?」
キョロキョロと見回す。茅晶はその顔を呆れて覗き込んだ。
「杳くん、何だってこんな所で寝てるの?」
「………ちあき…?」
小首を傾げて。
「あ――っ!!」
一気に思い出した。