第 8 章
竜の宮
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 山の中へ入って、茅晶は感づかれないように、随分遅れて寛也達を追いかけていた。

 竜達の匂いを追って、飛鳥の山を奥へと分け入る。

 そこで、思いがけないものを見つけた。

「杳くん…」

 道端に、杳の横たわる姿を発見したのだった。

 危うく通り過ぎるところだった。竜の気配を追っているのでなければ、多分、気づかなかっただろう。

 人や獣が側に寄れないように、強い結界が張られていた。

 一見して、竜の仕業だと分かる。しかし、何故こんな所に…。

 触れようとして、電流のようなものが指先に伝わった。。

「いたっ」

 それは、何者も近づけないように、杳を守った結界なのだと気づいた。施したのは竜王だろうか。

「杳くんっ、杳くんっ!起きなさいよっ」

 茅晶は怒鳴ってみた。が、術をかけられている為、目覚める様子はなかった。取り敢えず、ここに放っていく訳にはいかないと思った。竜の結界ならば、竜の力のある物で破れはしないだろうか。

 茅晶の手に、竜剣が現れた。それは、銀色の刀身をきらめかせて、振り上げられた。

「起きないと、まっぷたつよっ」

 思いっきり、杳に向けて振り下ろした。

 剣が結界に触れた途端、火花が散り、再び激しい電流のようなものが流れる。

「きゃっ」

 思わず剣を手放す。カランカランと音を立てて、竜剣は足元に転がった。

 電流の通った手のひらが熱くなり、茅晶は思わず手のひらを見つめる。

「いったー」

 再び剣を拾おうとして、ふと、杳が目を覚ましているのに気づいた。

「あれ…?」

 ゆっくり起き上がる。結界は破れてしまったのか、杳はごく普通に起き上がった。

「ここ、どこ…?」

 キョロキョロと見回す。茅晶はその顔を呆れて覗き込んだ。

「杳くん、何だってこんな所で寝てるの?」
「………ちあき…?」

 小首を傾げて。

「あ――っ!!」

 一気に思い出した。


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