第 8 章
竜の宮
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「無様よね、ホント」

 雪乃はボロボロの状態の仲間を見下ろして呟いた。

 力を封じられ、人形峠の洞窟の中をさ迷っていた辰己は、二日間飲まず食わずだった。人としての体力も限界だった。

「風竜のヤツ、もう少し手加減すれば良いものを」
「あら、手加減なんかしてたら、目ざとい水竜には見抜かれてたんじゃないかしら」
「お前、あいつの肩を持つのか?」
「誰が。事実を言ったまでよ。それより…」

 草の上でへばっている辰己に近づいてから、わざとらしく身を引く。

「臭いわね」
「二日間も風呂に入ってないなんて最悪だな。早く連れて帰ってくれ」
「嫌よ」

 そっけなく、一言で返す。

「触りたくないわね。町へ降りて温泉にでも浸かってらっしゃい。確か南へ30キロも下ればあったと思うわ」
「30キロ?竜になれないのに、そこまでどうやって行くんだ!?」
「歩けばいいわ」
「歩くぅ!?二日間飲まず食わずの僕に、これ以上歩けと言うか?」
「臭い男は嫌いよ」
「紫竜っ!」
「やだ、さわんないでよ。このヘンタイッ」

 山の中に木霊する騒がしい声。

 その様子を崖の上ら眺めて、大きくため息をつくのは光竜の優だった。放っておくといつまでも掛け合いをやってそうな二人に、仕方なく声をかけた。

「いい加減にしておけよ」

 声をかけると、ぴたりと会話をやめて、揃って見上げてきた。

 露骨に嫌そうな表情を向けてくる雪乃と辰己。


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