第 7 章
勾玉の結ぶ記憶
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「みんな、こっちへ向かっているようだよ」
襖を開けて入ってきたのは潤也だった。それをちらりと見やって、小さく答えたのは翔。
「そうですか…」
余り親しく会話を交わすこともなく、ただ、静かにしているだけの二人に、雪乃はうさん臭そうな目を向ける。
翔も良く理解できないが、潤也も何を考えているのか読めなかった。この人物は本当にこちらの仲間に加わったのだろうか。いや、それよりも今生では寛也とは兄弟の筈だった。てっきり敵側につくものと考えられたものを、何故なのだろうか。
マジマジ見ていたら、雪乃の視線に気づいて潤也が振り返った。
「何か?」
「別に」
答えると、クスリと笑われた。気に入らない奴だと感じた。
「あ、そうだ。ちょっと頼まれてくれますか?」
ふと、思い出したように翔が声をかけてきた。
「人形峠に残してきた闇竜、をそろそろ助けに行ってください」
「は?何でよ?自力でそのうち帰ってくるわよ」
「でももう二晩は経っているからね。多分、飲まず食わずで弱っていると思うよ」
横から穏やかにほほ笑みながら言う潤也も、腹立たしかった。
「術はそろそろ解ける頃だけど、自力で帰ってくる余力はないんじゃないかな」
「それを私に迎えに行けと?」
「やってくれますよね」
翔の言葉は丁寧語を使ってはいるものの、明らかに命令のそれだった。ムッとして出た言葉は嫌み。
「闇竜なんてどうなろうと困らないんじゃないの、竜王」
「まあ、そうですが」
はっきりと返す翔の言葉に、眉の根を寄せる雪乃。
「このまま野垂れ死にされても後味が悪いじゃないですか。一応、仲間なわけですし」
「一応、ね」
「行ってくれますよね」
「命令ならね」
そう言って、雪乃は二人に背を向ける。
ここにいてこの連中と顔を突き合わせているよりも、外に出た方が気分はマシだろうと思った。
「くれぐれも気をつけて」
「ありがとう」
翔の心にもない言葉に、ありがたく思っていない返事で答える。
そのまま雪乃は部屋を出た。
* * *