第 7 章
勾玉の結ぶ記憶
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 竜体になって飛び立つ雪乃を見送って、潤也が笑顔を崩す。

「翔くん…」
「弱い者にいられても困りますからね」

 わずかに目を伏せて、また、呟くように言う。

「足手まとい?」
「そうとも言いますけど」

 だから追い払った。言外の言葉に、潤也はため息をつく。

「…杳が来てるよ」
「は?」

 いきなり変えた話題に、それまで何の色もなかった表情に、困惑が浮かぶ。が、それもすぐに元の顔に戻る。

「ヒロ達に合流したみたいだ。ここへ来るよ」
「仕方のない人ですね。相変わらず何にでも首を突っ込んで」
「どうするの?ここへ招待する?」
「入れさせませんよ。ここへ来る前につまみ出してください」
「そう…いいよ」

 少し間を置いて答える。

 翔の瞳に映るものは何なのか。潤也は翔の横顔を見ながら思う。

 もう気づいているのではないのか。それとも本当に分からないのだろうか。

 同じ竜である雪乃にできなかった、潤也を目覚めさせた人の存在を。

 自分達の大切だった人が本当は誰なのかを。





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