第 7 章
勾玉の結ぶ記憶
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 寛也は、ゆっくりと覚醒するのを感じた。その腕の中に、暖かな温もりを感じて、心地よい目覚めだった。

 開いた目の前、至近距離に杳の顔があるのが見えた。

 目鼻立ちの整ったきれいな顔。いつも自分を見上げていたまなざしは閉じられて、長い睫が白い頬に影を落としていた。

 赤く、紅をさしたような唇が、ひどく艶やかに見えた。

 誘われるように、唇を近づけようとして、はっとした。

 慌てて起き上がった。

「何やってんだ、俺はっっ」

 一気に目が覚めた。驚いたためか、心臓がバクバク鳴っていた。

 よく覚えていないが、昨夜はあのまま眠ってしまったような気がした。疲れていたこともあったので。

「う…ん…」

 身じろぐ杳に、見ていて顔が熱くなる気がした。

 ――何でだーっ!?

 慌ててベッドから転げ落ちるように後ずさる。その物音に、杳が目を覚ました。

「あれ…ここ、どこ?」

 上体を起こし、ぼんやりとした顔でキョロキョロと辺りを見回し、寛也を見つけると、ぽつりと言った。

「ヒロ、寝相、悪過ぎ」

 それだけ言って、コトリと横になり、そのまま寝入ってしまった。寛也は恐る恐る近づいて杳の顔を覗き込む。

「おい、また寝る気か、お前…」

 どうやら起きる様子はまるでなかった。

 ほーっと、寛也は長いため息をついた。そのまま、鼓動の治まるのを待った。

 昨夜は杳に救われた気がした。暖かな腕のぬくもりが、泣きたいくらいに嬉しかった。

 杳に思いを寄せてしまう翔の気持ちが、何となく分かるような気がした。

「いや、しないっ!」

 慌てて声に出しながら、頭をぶんぶん振って否定する。

 冗談ではないと、気持ちを切り替えようと寛也はシャワールームに向かった。


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