第 7 章
勾玉の結ぶ記憶
-2-

4/8


 結局夜半までかかって、結論は当たって砕けろ的な作戦しか思いつかなかった。

 メンバーがメンバーだけに、仕方がないと聖輝がため息をついた。

 なんだかここ2―3日の間に、気のせいか老け込んできたのではないかと、寛也は聖輝を見ながら思った。

 そして、カードキーを持って、自分もため息をついた。

「怒ってるぞ、絶対に」
「だよなー」

 もう一度ため息の寛也に、聖輝が諭すように言う。

「とっとと部屋へ帰って寝ろよ。明日こそは本番だからな」
「だったら部屋を変わってくれよ」
「甘えるな」

 そのまま聖輝にたたき出された。その横で、苦笑している露が見えた。

 ドアを閉められ、寛也は仕方なく隣の部屋へ向かった。カードキーを差し込んでそっと開けると、テレビの音が聞こえた。黙って入ると、二つあるベッドのうちの一つに、浴衣に着替えて座っている杳の後ろ姿が見えた。

「な、何だ。まだ起きていたのか」

 控えめに声をかけた。と、ゆっくり振り返って寛也をにらんできた。

「オレ、夜は平気だから」

 夜は平気で朝が苦手だとは、いつも言っていた。それくらいなら、早く寝ればいいのにと思う寛也。

「風呂…」

 浴衣姿から、もう済ませたことは知れていた。

「先に入った。湯は自分ではれよ」
「あ、ああ…」

 答えてバスルームに入る。面倒なので、そのままシャワーだけ浴びることにした。

 一人になって、ひどく疲れていることに初めて気づいた。と言うよりも、毎日毎日が目まぐるしかった。ゆっくり考える間もないくらいに。

 何でこんなことになってしまったのだろうか。あの日、雪乃が現れなかったら、今も変わらず学校に行って、テストを受けて、部活をサボって、潤也の作ったご飯を食べて。

 それで良かったのに。

 普通の日常がひどく懐かしく思えた。

「…」

 ぶるっと頭を振る。

「いや」

 こんな後ろ向きでマイナスな思考、自分ではないように思った。

 きっと身体も疲れているせいだからだと思った。やはりもう寝た方がいいのだろう。

 寛也は手早くシャワーを終えると、さっさと身体を拭いて、バスルームから出た。


次ページ
前ページ
目次