第 7 章
勾玉の結ぶ記憶
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先ほどの会話の揚げ足を取る杳に、露は肩を落とす。そんな連中の様子を見て、寛也が口を挟んできた。
「どうしても付いて来るって言うなら、この部屋に縛り付けて、ドアに起こすなって書いた札をぶら下げて、3日くらい延長して、金を先払いしておきゃ、少なくとも3日は付いてこれないだろう」
「恐ろしいことを…」
余りにも念の入った計画に、露でなくとも引きそうになる。言い返そうと杳が口を開きかけた時、ため息混じりに聖輝が諭すように言った。
「竜王の前で、お前の面倒まで見ている余裕はない」
「戦ってばかりだから、そんな風に思うんじゃないか」
杳の言葉に、聖輝は詰まる。
「分かってる?相手を殺しに行くわけじゃないんだよ。説得するんじゃない?」
お前が言う言葉かと、突っ込みを入れそうになって、しかし、思い止どまったのは寛也だけではなかった。
「翔くんも、潤也も人間界征服なんて言うような人間じゃないよ。それなのに…絶対に何かの理由があるって思うんだ」
「そんなことは言われなくても分かっている。俺達全員」
「だったら…」
「話を聞こうとしないんだ、あいつらは」
思い出すのはかつての竜王。乱心したと言われ、暴れる様。誰の言葉にも耳を貸さず、ただ、暴れるだけだった。
「竜王が現世での血縁であるお前に、危害を加えるような真似をするかどうかは分からないがな」
そう言って聖輝は肩をすぼめて見せる。
翔のことを言うなら潤也も同じだと、寛也は言いかけてやめる。その代わりに別の言葉をはく。
「とにかくお前は帰れ。後は俺達で何とかする」
そう言う寛也に、ちらりと目を走らせて、そっけなく返す。
「いいよ、オレ、自分で行くから」
「お前、またそんなことを言ってっ!」
「オレが翔くんも潤也も説得する」
言って、プイッとそっぽを向く。その杳に聖輝が言う。
「どちらにしても竜王の結界を見つけられない限り、それもできないだろう」
「見つけるよ」
「無理だと思うけど」
今度は露が口を挟む。それを振り返り。
「何だよ、露はオレの味方じゃないのか?」
「誰がっ」
「だってさっき、一緒に観光しようって言ったじゃないか」
「それとこれとは話が別だってば」
わざとかどうか、話をすっかりまぜっ返そうとする杳。
寛也はその腕をつかむ。