第 7 章
勾玉の結ぶ記憶
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 竜体で移動して、府内のもう一つの観光名所である京都市内に入った。市内の安価なホテルは、書店で立ち読みした観光雑誌で見つけた。

 ビジネスホテルのツインが一番安いと主張する寛也に対して、部屋食が良いと言って譲らなかったのは杳だった。どっちでも好きにしろと諦めたのは聖輝。宿なんて修学旅行以来だとはしゃぐのは露だった。

 一体誰がここの支払いをするのかと頭を痛める自分が、この中では一番常識人ではないかと思う寛也だった。

 結局、ホテルにツインルームを二部屋取って、片方の部屋に集まって作戦会議となった。

「秋の紅葉もいいけど、新緑も奇麗だろうなぁ」

 観光ガイドを広げて見ている杳と、その横から首を突っ込んであれやこれや言っている露の二人は、結構気が合う様子を見せていた。それを見やって、ため息をつくのは聖輝。二人の様子に、どうやら本気で観光するのではないだろうかと疑い始めていた。

 寛也は黙って、部屋の隅でその様子を見ていた。

「観光バスに乗ったら、適当な所に連れていってくれるんじゃないかな」

 ガイドの観光バス案内のページを広げて露がそう言うのを、杳はちらりと横目で見ながら返す。

「露って、意外とジジ臭いこと言うよな」
「ジジ臭い…?」
「何が悲しくて大型バスで団体行動しなきゃなんないんだよ。第一、目的地に行っても集合時を気にしながらだから、ゆっくりできないじゃないか」

 杳の言葉に、露は呆れる。

「お前、団体行動には向かないな」
「人に合わせるの、面倒だし」
「だろうな」

 呟いて、露はもう一度観光ガイドをめくった。

「今度戦う時は、もう少し考えた方がいいな」

 杳と露の無駄口が一段落した所で、聖輝が口を開いた。聖輝の言葉に露が振り向く。

「それ、オレに言ってる?」
「お前と結崎」

 今度は寛也が振り返る。

「怪我人が出なかったからよかったものの、死人でも出てみろ、大騒ぎだぞ」
「怪我人一人出てない方が不自然だと思わないのかなぁ」

 人間ってちょっと変だと、付け加えながら露が呟く。

「とにかく、相手の挑発に簡単に乗るな。余り物事を深く考えることなく飛び出して行くのは、お前ら、揃っての悪い癖だ」

 言われて、何やら言い訳やら文句をつけるのは露だった。

 これではまるっきり保護者にようだと、露の言葉を聞き流しながら聖輝はため息をつく。

「それからお前」

 次は杳に向かう。聖輝の声にちらりと視線だけ向ける杳。

「朝になったら岡山へ帰れ。観光なんぞもっての他な上に、竜王の宮へ連れて行く気はないからな」
「嫌だ」

 一蹴だった。

 聖輝のこめかみがピクリと痙攣する。その表情を素早く読み取った露が、隣の杳をつつく。しかし、杳はそれを無視した。

「置いて行かれたって、また追いかけてやる」
「…好きにしろ。とにかく連れては行かない」

 聖輝の言葉に、杳もムッとした表情を浮かべる。険悪な雰囲気に、露が口添えをする。

「今日みたいな戦いになったら、多分無事じゃ済まないんだからさ」
「戦い方を気をつけるんだろ?」
「無茶、言うなぁ」


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