第 7 章
勾玉の結ぶ記憶
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捜して捜して、散々歩いた。
杳をようやく見つけたのは、見晴らしのよい、ロープーウェイで登った広場の展望台だった。一人でぼんやり天橋立を眺めていた。何をしているのかと、寛也は近づいて行く。
「杳」
呼ぶと振り向いた。しかし、寛也の姿を認めて驚いた表情を浮かべてから、すぐに視線を逸らす。
その杳にゆっくりと近づいて。
「あ、あの…」
何て言葉をかけるのがいいのか、全く考えていなかったことに初めて気づいた。言葉を探していると、杳の方から声をかけてきた。
「加減を知らないんだから」
「えっ?」
キョトンとする寛也に、杳は顎で指し示す。その先に巨大な穴を開けた天橋立があった。警察やら機動隊らしき人々で、おおわらわの様子がここからでも伺えた。
「オレが目を離すとすぐこれだ。周囲の迷惑なんか顧みずに、暴走の限りを尽くす大悪党」
「だってこれはジュンが…っ」
ジロリと睨まれた。言い訳が立たないことは分かっていた。
寛也はため息ひとつついて、ふて腐れたように言った。
「悪かったな」
「オレに謝られても困るけど」
「違うって」
顔を背けたたままの杳の肩を掴む。と、反射的に杳は身を引いた。
その表情に、今までになかった色を見たような気がした。何だろうかと思った一瞬後、その色はすぐに消え失せる。
「馴れ馴れしく触るなよ、ばか」
杳の言葉に、思わず言い返しそうになるのを寛也は何とか堪え、そのまま一気に謝ることにした。
「さっきのことだ。俺、お前に当たってしまって…」
「ばっかじゃないの。謝るくらいなら初めから言うなよ」
「な…!?」
「全く、後先考えない短絡思考なんだから」
言って、プイッとそっぽを向く。言われて寛也は、自分が謝罪の為に追いかけてきたこともすっかり忘れて、気づけば言い返していた。
「お前だって人のこと言えるのかよっ。何度もばかばか言いやがって」
肩を掴む。が、杳はその手を振り払うようにして逃げようとする。それを掴んで引き寄せる。
「聞けよっ」
「触るなっ」
次の瞬間、寛也は思いっきり頬を張り飛ばされた。
引っぱたかれた頬が、見る間にひりひりと腫れ上がるのを感じた。
「お前なぁ」
余りの痛みにしゃがみこんでしまう。火花が飛んだように思えた。
その寛也の目に、ふと止まったものがあった。丸い、奇麗な曲がった石だった。薄く黄色い色を放って見えた。
「あれ…?」
足元に転がっていたそれを拾い上げようと手を伸ばした。
「待って、それ…」
手にした瞬間、頭の中を電流のように駆け巡るものを感じた。光のように、一瞬だけの、しかし色鮮やかな光景だった。
* * *