第 7 章
勾玉の結ぶ記憶
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「まってっ!」

 聞き覚えのある声に、寛也はピタリと足が止まった。空耳かと思うが、側で露も同じように歩みを止めた。思わずお互いの顔を見合わせる。まさかと思いながら、恐る恐る振り返った。

 そこに、人込みの中から姿を現した人物。

「ばかヒロ、待ってってば」
「おまえ…」

 息を切らせて寛也達に追いついて来たのは、岡山に置いて来た筈の杳だった。

「やっと見つけた」

 寛也の腕をむんずと掴み、逃げられないようにする。

「何で…?」

 ここまでやってきた根性もすごいが、それよりもこの人込みの中で見つかってしまったことの方が、寛也には驚きだった。これだけ人が多ければ、すれ違う確率の方が高い筈である。

「もう、何時間かかったと思ってんだよっ。しかもオレの来ない間に派手な事しでかして。一体何やってたんだ」
「関係ない」

 言われて、潤也のことが頭をよぎった。寛也は乱暴に杳の手を振り払う。

「…潤也は?」

 見透かされでもしたかのように、すかさず聞かれた。自分でもビクッとしたのが分かった。

「あいつは敵に回った」

 言いたくない言葉を口にする。杳がそんな寛也に、不審そうな表情を向ける。

「敵って、翔くんのこと?」
「そ。竜王と風竜相手に、俺達3人ってわけ」

 杳の問いにそう答えたのは露だった。肩をすぼめながら。

「ちょっと待ってよ。どうしてそうなるんだよ?だって潤也は…」
「知るかよっ!」

 寛也の怒鳴り声に、杳がびっくりして息を飲んだのが分かった。

 うるさい奴だなと呟きながら、露が口を挟む。

「絶対に仲間になると思っていたのに、驚きだよな。何考えてんだか、凪も」

 露の言葉に、寛也は唇をかみしめる。

「南へ、電車と反対方向へ飛んでいるのを見たけど?敵に回ったって言うんなら、竜の宮はここじゃないんだ?どこなの?」

 冷静な杳の言葉に、えっと思って見やる。意外にも勘がいいようだった。

「もうついて来るな」

 言い捨てる。腹一杯食べたにもかかわらず、腹立たしいことは治らないようだった。


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