第 6 章
罠
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風と熱がおさまって、遮られていた視界が開けてくると、天橋立の真ん中に、ぽっかりと巨大な穴が出現した。そこへ海水が流れ込んできた。
一気に上空が暗くなり、ポツポツ雨が降り始めたかと思ったら、あっと言うのに土砂降りになった。
「まったく…」
聖輝は呆れて物も言えなかった。足元に転がる寛也を見下ろして、その腹を蹴飛ばした。
「うう…」
うめき声を上げて寛也は目を開ける。生きてはいるようだった。
「それくらいの傷、自分でふさいでおけよ」
「静川…もう少し、いたわれよ」
「甘えるなっ」
少し離れた所で、ようやく気が付いたのか、潤也が起き上がろうとしているのが見えた。しかし、立ち上がることはできずに、四つん這いになったまま、ゼイゼイと息をはいていた。
「おい、水穂は?」
「そこらへんで…」
辺りを見回すと、豪雨の中でふらふらしながら立っているのが見えた。身体の傷は自己修復したらしいが、体力は使い果たしていた様子で、彼もまた、すぐにバタリと地に伏した。
やれやれと、ため息をつく聖輝。
「竜王と戦う前からボロボロなんて、情けない奴らだな」
「うるせー」
悪態をつこうとする寛也を、フンと鼻先で笑ってから、聖輝は潤也に近づいた。まだ大きく呼吸を繰り返して、何とか回復を図ろうとしていた。
「お前、自分の役目は、俺達を倒すこととは言わなかったな」
聖輝の言葉に、寛也が顔を上げる。
「俺達を完全に覚醒させて、竜王に得があるとは思えない。それとも今のままじゃ、相手にもしたくないから強くなれってことか?余裕、かましてるってことか?」
しかし、見下ろす潤也は下を向いたまま、答えなかった。
「違うよな。人界征服なんて言って、手を出してこない。破壊しているのは、むしろ俺達の方だ。竜王は手先をよこすだけで、何もしてこない。しかもお前以外は弱いと分かっている連中ばかりだ。あいつは何を考えているんだ?」
聖輝は黙ったままの潤也の襟首を掴み上げた。潤也は苦しそうにしながら、顔を背ける。