第 6 章
罠
-3-
12/12
「言ったら君達は戦いを放棄するだろう?」
「何?」
「もう一度あの戦いを繰り返す。それが竜王の考えだよ。あの時の戦いをね」
言って、潤也は聖輝の手を振り払う。
ゆっくりと立ち上がる頃には、呼吸は随分整っていた。回復力は寛也に比べて随分速かった。
「待っているよ、竜王の宮でね。傷を治して、もう一度きたえ直して来るといいよ。天竜王は手ごわいから」
その身から再び立ちのぼるオーラ。
「待てよ、ジュン」
行ってしまうと思い、寛也が思わず声をかけた。
寛也の呼ぶ声に振り返る目は、何かを言いたそうで、しかしそれはすぐにかき消えた。
「お前、天竜王に…あのチビに付くのか?俺じゃなくて」
「僕には彼の悲しみが分かるから…」
言って、背を向ける。
「ヒロ、待っているよ」
潤也の身体が次第にかすんでいく。その代わりに現れる竜体。
「待てよっ」
止めようと起き上がろうするが、身体の痛みにひざまずく。潤也はその寛也を振り返るでもなく、そのまま天へ舞い上がった。
「何でだよ、潤也…」
つぶやいて、地面を叩く。通じない気持ちが悔しかった。
降りしきる雨が、寛也の背中を打ちのめすようだった。