第 6 章

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「言ったら君達は戦いを放棄するだろう?」
「何?」
「もう一度あの戦いを繰り返す。それが竜王の考えだよ。あの時の戦いをね」

 言って、潤也は聖輝の手を振り払う。

 ゆっくりと立ち上がる頃には、呼吸は随分整っていた。回復力は寛也に比べて随分速かった。

「待っているよ、竜王の宮でね。傷を治して、もう一度きたえ直して来るといいよ。天竜王は手ごわいから」

 その身から再び立ちのぼるオーラ。

「待てよ、ジュン」

 行ってしまうと思い、寛也が思わず声をかけた。

 寛也の呼ぶ声に振り返る目は、何かを言いたそうで、しかしそれはすぐにかき消えた。

「お前、天竜王に…あのチビに付くのか?俺じゃなくて」
「僕には彼の悲しみが分かるから…」

 言って、背を向ける。

「ヒロ、待っているよ」

 潤也の身体が次第にかすんでいく。その代わりに現れる竜体。

「待てよっ」

 止めようと起き上がろうするが、身体の痛みにひざまずく。潤也はその寛也を振り返るでもなく、そのまま天へ舞い上がった。

「何でだよ、潤也…」

 つぶやいて、地面を叩く。通じない気持ちが悔しかった。

 降りしきる雨が、寛也の背中を打ちのめすようだった。



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