第 6 章

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 炎竜が降り立ったのは天橋立のちょうど真ん中辺りだった。平日の早朝、歩いている人もまばらで、誰に感づかれることもないだろうと、寛也は堂々と着陸した。

 寛也に続いて残りの三人も地面に足を付けた。

「さてと、結界を探さなきゃな」

 辺りを見回して寛也が言う。

「どうやって探す?」

 同じように周囲を眺め回して聞く露に、答えたのは潤也だった。

「空間の歪みを見つけるんだ。すぐに見分けがつくはずだよ。手分けをしよう」
「そうだな」

 同意を示すのは聖輝。その声を聞いて、聖輝の目の前を露が擦り抜けた。

「じゃあオレ、あっちのロープーウェイに登って、全体風景を…」
「そんな観光客の大勢いるような所に入り口を作るわけないだろう」

 そう言って聖輝は、露の首根っこをヒョイと掴んで引き戻す。露はぷくっと頬をふくらませて見せた。

「それから、念のために単独行動は避けた方がいい。二手に分かれよう」

 そう言う潤也の提案に異を唱えたのは、露と寛也の二人だった。

「オレ、一人でもいいけど」
「俺も」

 ちらりと、そう言う二人に目を走らせて、潤也は聖輝に向かう。

「静川さん、ヒロと水穂くんのどっちがいいですか?」
「どっちもお断りだ」

 即座に返す聖輝の返事に、ムッとするのは寛也と露の二人。その二人の様子に、肩をすぼめて見せながら、潤也も呟くように言う。

「僕も同感ですけど」
「お前なぁ」

 寛也が文句を言おうとするのを片手でひょいとかわして、潤也は続ける。

「同じ顔をして歩くと目立つんですよ。だから、静川さんはヒロをお願いしますね。僕は嫌われているみたいですが、水穂くんと組みますから」
「…またか」

 心底嫌そうに呟いて、聖輝はため息をついた。

 とりあえず決まった組み合わせで左右に分かれることになった。結界を見つけた時点で片方が見張り、片方がもう一組へ連絡をする。間違っても単独突入はしないことを念押しして、潤也は聖輝に細かいことの打ち合わせを始めた。一番冷静なのは聖輝だと見て取ったのだろう。その様子を横目に見ながら、寛也はそっと露に耳打ちした。

「用心してろよ」
「は?」

 何のことかと見返す露に、寛也は真剣な表情を向ける。

「やばいと思ったら、ジュンを置いてでもいいから全力で逃げてこい」
「どーいう…」
「今の俺達の目的は天竜王を倒すことじゃない。まず地竜王を助け出すことだ。無駄な犠牲は避けなきゃな」

 そう言う寛也を、露はマジマジと見やる。

「…お前、そう言う理性的なことを言う奴だった?」
「うるさいな」
「他に何かあるんだろ?」
「別に」

 視線を逸らす寛也に、露は勘ぐるような目を向けるが、すぐに返した。

「ま、いいか。逃げ足ならオレなんかより、お前の弟の方が断然速いだろうけどな」
「…」

 含みのない露の言葉に、寛也は押し黙って潤也を見やる。

 そう、速いのは確かなのだ。逆に言うと、風竜から逃げられる者は誰もいないのだった。


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