第 6 章

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「オレ、ずっと気になっていたことがあるんだけど」

 風呂が沸くのを待ちながら、だらだらテレビを見ていると、ふと、露が言った。

「竜王の剣。あれ、確か双頭剣――2本あった筈だよね」
「そう言えば…」

 露の言葉に寛也は今更ながらに思い出す。

 初めて集まったあの洞窟で、そこに描かれていた竜神達。それぞれが手にしていた竜玉と、剣と鏡。天を指す竜王の持つ剣は2本あったのだった。しかし翔の手にしていたものは1本だけだった。あの時の違和感が浮かんでくる。

「もう1本はどうしたんだっけ?」

 現世に転生してくる前の記憶は不確かだった。

「オレ達、生まれ変わって竜玉はこの手の中にあるよな。だのに今の竜王はどうして1本のままなんだ?」

 また互いに顔を見合わせて、古い時代の出来事を思い出そうとする。その様子に、潤也がちらりと杳の顔を見やってから、口を挟む。

「僕、見たよ、それ」

 潤也がそう言うと全員が振り向いた。

「ヒロを捜して福井に行った時に、杳と一緒に」

 話を振ると、杳はわずかに視線を逸らして、小さくうなずいただけだった。

「天竜王に恨みを抱いたモノだと思うけど、あれは鬼だよ。覚えがない?」

 潤也は今度は寛也達の様子を伺う。

「そう言えばいたような…」

 露が首を傾げながら呟く。かつてあみやのいた中央の宮に、小鬼が住みついたと聞いたことがあった。大して害もなさそうだから、放置するのだと言ったのは竜王だった。

「僕が考えるには、剣が竜王の元に戻らないのは、何らかの封印が施されているんじゃないかな。多分、地竜王によって。その剣をあの鬼の子が手に入れた」

「そうか、地竜王は自らを封印しているんだって、天竜王が言っていたよな。封印は剣ごと成されたってことか。つまり、その封印が解ければ…地竜王が目覚めればもう一方の剣は、竜王の元に戻るってことかな?」

 露のその言葉に、一同はしんと黙り込む。

 昔、竜剣を1本手にした竜王と戦った。それでもようやくに倒すことができたのだ。それが双頭揃えば、竜王の力は格段に上がることは目に見えていた。

 そうなれば絶対に太刀打ち出来なくなるだろう。


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