第 5 章
息づく大地
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 次に眼を開けた時、その場所に優の姿はなかった。ギョッとして、翔を見やると、優のいた場所を表情のないまま見下ろしていた。

 ゆっくりと振り返る翔。

「今のは…彼はどうなったの?」
「さあ。手加減はしましたけど」

 何が何だか分からないまでも、無茶なことをしたのだとは紗和にも理解できた。呆然とする紗和に、翔は冷たく言い放つ。

「仲間が次々に倒れていっても平気なんですね」
「え?」

 けげんそうな顔を向けると、翔はわずかに表情を和らげた。

「まず最初に命を落としたのは炎竜。手加減知らずで無鉄砲に立ち向かってきて。四天王と呼ばれた連中も炎竜が欠ければ残りは烏合の衆だった。ましてや他の5体など。それなのにあなたは最後の最後まで守りに回った。そして最後に背後から術をかけてきた。卑怯だったと思いませんか?竜王と並び称される地竜王が。そして今回もまた――」
「何のことだよ?」

 自分には覚えのないことだった。

「僕は貴方に負けない自信があります。だのにいつも貴方は逃げてばかりだ。このまま覚醒しないまま叩き潰してもかまわない。だけどそれじゃあ僕の気がおさまらないんですよ、地人」

 見返してくる翔の眼は真剣だった。しかしどこか悲しげにも見えた。

「何度言っても聞いてくれないんだよね。人違いだって。僕は何も知らないのに」

 ため息混じりに言ってみる。

「自分で封じただけですよ。でももうその封印は解かれつつある。一度、力を使ったでしょう」

 確信に満ちた翔の言葉。

「地竜王の封印は本人にしか解けない。貴方が封じたものは貴方自身の力と記憶、それから…」

 ふと、言い淀む。深い影がその瞳によぎる。

「いくら言われても知らないものは知らないよ。僕は普通の高校生にすぎないよ」

 もう何度この少年を相手に言ったか知れない言葉。翔はいつものとおり聞く耳を持たなかった。


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