第 5 章
息づく大地
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「ばかっ!!」

 横から叫ぶ声がした。と同時にバチバチと言う音。

 てっきり命中するものと思っていた紗和は、身に何も起きていないことに、恐る恐る眼を開けて確認する。

 そこに自分をかばうかのように眼前に立つ優の姿を見た。

「うっ…」

 その場にひざまずき、うずくまる背中。それを冷たい眼で見下ろす翔がいた。

「どうして貴方は僕の仲間になっていたんですか? 僕にはいまだに疑問なんですけど」

 紗和は優を助け起こそうと近づく。しかし、差し出した手は優に叩かれる。

「それを言うなら俺だってあるぜ。お前、華竜の言いなりになって人界征服なんて言ってるんじゃないだろう。そのお前の真意、知りたいんだがな」

 見やった翔は先程と変わらない無表情だった。

「本当は他に目的があるんじゃないか?その証拠に、お前、炎竜達を襲う以外に命令しないじゃないか」
「手ぬるいってわけですか。いいですよ、都市の2つや3つ、破壊しましょうか」

 さらりと言ってのける翔に、優は眉を寄せる。

「僕は時期を待っているだけですよ。征服なんてたやすい。いつでもできます。だけど邪魔な連中は先に叩いておかないといけないでしょう?」
「いいかげんにしておけよ。お前、本当は…」
「うるさいですよ。逃げるなら黙って逃げ出せばいいんです」

 一瞬大きくなる翔の気。と同時に光が部屋中にあふれ出す。

 翔の手のひらから二つ目の光球が繰り出されるのを紗和はくらむ眼で見た。

 光は紗和ではなく、優に向けてまっすぐに繰り出された。

「うわーっ!!」

 眩しくて、眼を閉じた。光が、ひどく熱く感じた。


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