第 5 章
息づく大地
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「もう帰ってきやがった。早すぎだぜ。あいつら、何やってんだ」
舌打ちして呟く。
優は竜王自ら出向く先に、四天王全員揃っているだろうから、てっきり長期戦になるものだと踏んでいたのだった。
優は紗和の腕を掴む。
「逃げる気があるならついてこい」
紗和の返事も待たずに、優は駆け出す。出口と思しき場所に手をかけて、扉を開くように空気を押し広げる。
ぱあっと、光があふれる。出口が見えたと思ったそこに人影があった。翔と、少し後ろに雪乃が立っていた。
紗和の腕を放し、優はさっと身構える。
「帰ってきた訳ではないみたいですね」
そう言って翔は冷たく優を見やり、それから紗和に眼を向ける。
「他人の手を借りないと逃げ出すこともできませんか、地竜王・地人(ちのと)」
「僕は…」
自分はそんなものではない。勘違いしているのは翔の方だと言いたいが、言葉が出てこなかった。有無を言わせない圧力が翔に感じられた。
「申し訳ありませんが、僕は今とても機嫌が悪くて、このまま貴方達を見逃すつもりにはなれないんですよ」
落ち着いた口調の中にも見えない怒りを感じてか、雪乃がぱっと身をひるがえす。それには眼もくれず、翔は気を膨らませる。それが、紗和の眼にもはっきり見えた。
風もないのに、柔らかく揺れ動く翔の髪の毛が、光彩を受けて発色するかのように銀色に光って見えた気がした。
「新堂さん、炎竜達がここへ来る前に決着をつけましょう」
「決着? ちょっと待ってよ、翔くん」
一歩歩み寄る翔に、一歩後ずさる紗和。
「自分で封印を解かないと、死にますよ」
翔は言って気を身体にためる。
右手のひらを前方の紗和に向けてまっすぐに差し出す。
その手のひらに光のようなものが集まってくる。
それが一体何なのか紗和には分からなかったが、明らかな身の危険を感じた。
しかし、どうしたらいいものか、逃げ方など分からなかった。
ぱっと放たれたその光に、紗和は慌てて両腕で顔を塞ぐ。
目を閉じた瞼の間からこぼれるように見えたのは銀色の光だった。