第 5 章
息づく大地
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その横顔に、紗和はふと疑問に思う。
「君はどっちの味方?」
「え?」
「君は翔くんを…竜王を裏切ったんだと聞いたよ。四天王と呼ばれる竜が集結しつつある中で、君は彼らにくみするの?」
「まさか…俺はただ…」
「僕を逃がしたことが知れたら、君はどうなるの?」
「さぁてね、そんなもの。それよりお前、逃げたくないのか?」
聞かれたくない心情なのか、優は言葉を濁した後、すぐに話を元に戻して紗和に聞き返す。
「逃げたいよ。でも…」
ここで逃げてしまって本当にいいのだろうか。自分は何か大切にものから逃げ出してしまうような気がしてならなかった。
何故だか理由なんて分からない。ただ、逃げることに後ろめたさがあった。
そんな紗和に優は、いらいらした声色のまま問い直す。
「お前、天竜王と戦う気、あるのか?」
見返した優の表情は厳しかった。
「お前がもう片方の竜王だろう。こんなにあっさり掴まって、逃げもせずに捕らわれたまま。何考えてんだか」
「僕はそんなんじゃないよ」
紗和のことを地竜王だと信じて、紗和の否定の言葉に耳を傾けようとしない翔達。何故自分なんかをそう思うのか、紗和こそ不思議でならなかった。
ただの一介の高校生なのに。
「よく言うぜ」
鼻で笑って優は続ける。
「お前、力を使っただろう、東京で」
「何のこと?」
「地竜王の力は大地をうごめかす。東京で、大地が揺れただろう。あれはお前がやったことだろう」
「揺れた…?地震…?」
そう言えば、一度地震にあったことを思い出す。里紗や潤也とはぐれて、杳と一緒に地下を逃げていた時のことだった。
「自覚ナシか。結構なご身分だな」
揶揄のこもった声でそう言うと、優は紗和に背を向ける。そんな風に言われても、紗和には身に覚えがなかった。
「まあいい。行こうぜ」
優は低くそう言って一歩足を踏み出したところで、ふと立ち止まる。