第 5 章
息づく大地
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 雪乃の案内で向かったのは、山の奥、獣道を分け入って、沼地を抜けて更に道なき道を進んだ先だった。昼なお暗く薮の生い茂る中に、その洞窟の入り口はあった。

 新緑がその洞窟の入り口を塞ぎ、誰をもの侵入を拒むように思えた。しかし、僅かではあるが確かにこの奥に仲間の力の眠ることを聖輝は感じた。

 こんな山奥、今日一日捜し回ってもたどり着けるような場所ではなかった。このまま雪乃を無視していたら、明日もこの山に分け入らなければならなかっただろう。

 罠かもしれないが、自分にとっては時間の短縮はできたと言って良いのではなかろうか。

「感じるでしょ? 鉱脈から伝わってくる石竜の鼓動が」

 雪乃の言葉に聖輝はあからさまに不審な表情を向ける。自分をここへ案内して、竜王に何の得があると言うのか。明らかに何らかの罠が考えられるのだが。

「竜王の目的は何だ?」

 しかし雪乃は何食わぬ顔をして答える。

「あら、疑っているの? 罠なんかじゃないわよ。種もしかけもしてないわ。そうね、あなた達にとっては都合よすぎるかもしれないから疑うのも無理ないかしら」

 かなり嘘っぽかった。おまけに言い様も鼻に付く。こんな雪乃を誰が信じようか。

 聖輝は考える。雪乃の言葉はアテにならない。ここは必ず何かあると見ていい。寛也と合流してから出直すべきだろうか。安全策が第一ではなかろうか。

 しかし、この目の前にいる雪乃は所詮は華竜。何があっても自分より力は数段下である。恐るるに足りない。そんな思いも聖輝の頭をよぎる。

 そして近くに感じる仲間の息遣いが聖輝を動かした。

 聖輝は足を踏み出した。

 気づかれないように雪乃が笑むのに気づいたが、聖輝は知らん顔をした。

 坑道の奥深く、やや下降気味になった石の道を下って行く。多分、昔の坑道らしく、随分長い間、人の入った様子がなかった。

 そして二人は坑道の奥に突き当たる。

 道はここまでで途切れていた。

「これは…」

 目の前に、黒く堅い大岩があった。聖輝はそっとその岩に触れてみる。強く石竜の気を感じた。彼の鼓動はここから伝わるものらしかった。

「この中か…」

 まさに岩の中だった。

 どうやって入り込んだものか、少々呆れる。その一方で、どうやったら助けられるのだろうかと、聖輝はしばらく岩の中の気を追う。が、はたと気づく。

 聖輝はまだ彼の様子を伺っていた雪乃に振り返る。

「案内、ご苦労だったな。もう帰っていいぞ」
「な…っ! 何て言い方!? 何様のつもり?」

 言われた者が雪乃でなくても怒り出すその物言いに、雪乃はきんきんまくし立てる。しかし聖輝は無視して再び岩を仰ぐ。

「ちょっと水竜、聞いてるの!?」


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