第 5 章
息づく大地
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見たことのある景色が広がっていた。
黄金色の大地と、青銀色の天空。
風がゆるやかに流れる葦の原に大きな影が泳ぐ。
見上げた空に舞う銀の鱗を持つ巨竜。
――これは何? 誰の記憶? いつのもの?
問いかける、もう一人の自分。
やがて舞い降りてくる竜。その巨体の作り出す風が一際強くなって、大地に身を降ろす。
そして竜は人の姿を形作る。みずらを結った銀の衣の青年に。腰に銀色の剣を携えている。逆光で顔がよく見えなかった。
その青年は近づいてきて、自分に笑いかけながら手を差しのべてくる。顔は見えないが、自分はその青年をよく知っているような気がした。
「――」
名を呼ばれた。自分の名ではない、しかし自分の名。優しいその声に答えようとして、差しのべられた手を取ろうとして――。
世界が暗転した。
ひどく悲しい思いと、赤い血だけが見えた。