第 5 章
息づく大地
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振り返る杳に、口が滑ったとばかりに口を押さえる寛也。その仕草はどうもわざとらしいものだった。
「竜の宮の巫女って言うあみやのこと?」
杳の言葉に寛也の方こそ驚く。その表情に杳は納得いった様子で呟く。
「ふーん、そうなんだ?」
「お前、どうしてその名を?」
しかし杳はその寛也の問いに答えるつもりはないらしく、自分の疑問とする所を聞いてくる。
「翔くんを元に戻すにはそのあみやって人が必要なんだ?」
「生きていればな。2300年くらい前の人間だけどな」
「え…?」
そうだったと、杳は見た目にもはっきりと分かるくらいにがっくりと肩を落とす。
今更なのだ。だからこそ、もうどうしようもないのだと、寛也は思った。
「ね、教えてよ。本当の話を。あみやはどうして死んだの?」
「そんなこと聞いてどうするんだ?」
「どうって…翔くんを止める方法を見つけられるかも知れないじゃないか」
「どうだか」
そう言って寛也は肩をすぼめる。
頭を拭いていたバスタオルをポンっと洗濯機の中へ放り投げると、面倒臭そうにキッチンの椅子に腰を降ろす。
そして、自分もあまり詳しくないのだと前置きしてから話し出した。