第 5 章
息づく大地
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一番風呂を杳に譲った寛也が二番風呂から上がると、先に床についていると思っていた杳は、リビングで待っていた。
膝をかかえて座る様は、どこか幼子のように頼り無さそうに見えた。先程までの元気がまるで嘘のようだった。
「何だ、まだ起きてたのか」
「ん…」
後ろから声をかけると、上目使いに一度だけ振り返る。
「明日は布団で寝られないかも知れないんだぞ」
言って、寛也はここ数日の自分を思う。
昨夜は阿蘇で呆然と過ごし、その前はビジネスホテルだったが、その前は溶岩の中だった。
明日はどこだろうかと、ちょっと不安になる。
「ね、寛也」
「あー?」
ふと、まともに名前を呼ばれて、寛也は眉をしかめる。
そう言えば「ヒロあんちゃん」だの「ケツザキ」だの「ヒロ兄」だの呼ばれたが、この呼び名は始めてだと気づく。
「翔くんはどうしてあんなふうになってしまったのかな。本当に優しい子だったのに」
「…さてな」
寛也が知っているのは、あの洞窟で出会った竜王が始めてだった。
葵翔の人となりは知らないが、自分の見たところの竜王は決して常識的な人物には見えなかった。
「もしも、ずーっと昔の、生まれるよりも前の何かが原因だとしたら、どうすれば元に戻ってくれるんだろう。オレに何かできるのかな」
「そんなこと、俺に聞かれてもな。あみやが生き返るでもなし」
「あみやって…」