第 4 章
静かなる水面
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 無茶苦茶な展開だった。

 あっと言う間に気を高めた寛也は、幾度かの変態で随分慣れてきた竜身に、その姿を変えた。

「何考えてんだよ、お前はっ!」

 叫んだところで、もう寛也の耳には届かなかった。

 炎竜は紅に染まった身体を大きくうねらせ、天へ駆け昇った。

 その風圧で、聖輝と優の二人は危うく吹き飛ばされそうになる。

 それを何とか踏みとどまって、空を見上げた。

「あの馬鹿が…!」

 聖輝は舌打ちをして駆け出す。

 勝負をしようと聖輝に持ち出したはずの優は、幾分の頭痛を覚えながらも聖輝に続いた。

 寛也の力は優などの比ではない。

 本来の気質が攻撃性なものだけに、他者へ与える被害は甚大である。

 放っておくと町のひとつやふたつ、簡単に黒焦げにすることは、今朝のニュースで周知のことだった。

 本人の好むと好まざるとに拘わらずである。

 炎の竜は天へ舞い上がると身を翻して、こともあろうか炎を撒き散らした。

 竜身にとっては気の放出に過ぎないこの行為も、人体にとっては甚だ迷惑なものだった。

「相変わらず、無茶苦茶な野郎だな。こんな『正義の味方』があるか」

 聖輝は腹立たしいやら、いじましいやらで、情けなくなってきた。

「あんた、水竜だろう。何とかならないのか?」

 優が横から口出ししてくる。

「何とかって…あれに水をぶつけても、熱の力で水蒸気爆発を引き起こすだけだぞ。忘れたのか。炎竜の力を押さえ込めたのは…」

 ただ一人、風竜の凪だけだった。

 四天王のうちの一人、今生では寛也とは双子の弟で生まれた潤也の力だけであると。

「じゃあ、どうしろって…」

 火の粉は容赦なく頭上に降ってくる。

 先程まで似たような事をしていた優でさえ、寛也の行為には閉口していた。

 油断すれば火傷しそうな熱気と、直接降り懸かる炎の槍を振り払うのが、精一杯だった。

 その時だった。

「何やってんだよ、バカヒロっ!」

 よく通る声が聞こえた。

「真っ黒焦げじゃないか。クリーニング代、請求するぞっ!」

 見ると、校舎の屋上に立って、拡声器を持って怒鳴っている杳の姿があった。

 途端、炎の勢いが失われていった。


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