第 4 章
静かなる水面
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「何だ、今のヤツは」

 よくよく訪問者の多い日である。

 部屋へ入るとそう声をかけられ、聖輝はうんざりしたような顔で、その声の主を見遣った。

 そこには、あまり見たくもない顔があった。

 窓縁に腰掛け、腕組みをしている。いつの間に、どこから入り込んで来たものか。

 聖輝は、露骨に嫌な顔をして見せた。

「何しに来た」
「あんたの様子を見て来いってね、大将の言い付けなんだよ」

 それは、あの日、あの竜の洞窟で出会ったかつての仲間の一人だった。

 名は何と言ったか、光竜の――杉浦優(すぎうらまさる)と、後日ここへ来て名乗っていた。

「俺がヤツらに寝返らないかと、心配でもしているのか? 生憎だったな。俺はお前らのいさかいに興味はない」
「どうだか」

 優は無表情のまま、窓の外へ目をやる。

 そこから、多分先程のやり取りを見ていたのだろう。

 聖輝は内心、面白くないものを感じながらも、相手にしないことにした。

「その代わりに、干渉は一切しないってのが、お前らが出して来た条件だろうが?」
「あんたと同じで信用していないだけよ」
「信用ね…」

 そんなものがなくとも、竜王の力があれば自分など押さえることも容易いだろうに。

 それをしてこないことに、多少の疑問を感じないではなかった。

 が、それも自分には関係無いことと、目をつむっている。

 いずれにしても、巻き込まれるのはゴメンだった。


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