第 2 章
宝玉の戦士
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「ホントに早くみんなと合流しないといけないんだからね」

 紗和の心配はまずこれだった。

 今は修学旅行の身、ただでさえ団体行動を乱しまくっているのに、これ以上のわがままをさせるわけにはいかにい。

「もうこりごりだよ」

 考えれば今日一日はとてもハードだった。

 バラエティに富んでいると里紗は喜んでいるようだが、自分はこんなのごめんだった。ゆったりと旅行気分を味わいたかったのに。

 そして、4人の連れて行かれた所はホテルの最上階だった。

 豪勢な所に住んでいるなと感心していると、お目通りが適った。

 中に入って、そこに待っていた人物に、一番に驚いたのは杳だった。

「翔くん?」

 部屋に入ると途端、駆け寄ろうとしたが、その前に思い止どまった。いぶかしげに、相手を見やって。

「偶然なのかな、まさか杳兄さんがいるとはね」

 翔は杳の姿に一瞬、動揺の色を浮かべるが、すぐに平静を装う。

「連れて来たけど、この中の一体誰なの?」

 雪乃は翔の座るソファの隣に立つと、4人を眺め回しながら聞いた。他の2人も、雪乃に習って後方に下がる。

「さあね、力を使ってくれない限り、この僕にだって分からないからね」

 翔はゆっくりと立ち上がると、右手を水平に挙げてみせる。

 ぶつぶつと口の中で何かをつぶやいたかと思うと、その手に銀の剣が握られていた。

「一人ずつその首をはねいみたら分かるだろうね」

 本気色をした目。ぞっとした。

 里紗は紗和の後ろに隠れ、杳は呆然と翔を見遣ったままだった。

 その中で潤也が一人行動を起こした。

 とは言っても身じろぎ一つするではなく、その身の内に力を込めたのだった。

 白い白いオーラが潤也の体を包んだ。

 どこからか風が吹き込んで、潤也の柔らかな髪を掻きあげてみせた。

「あれあれ、とんだ所で堀り出し物があった」

 驚く周囲をよそに、翔は笑顔を見せる。それは宝物を見付けた時の子どもの顔だった。

 その翔の目の前、白いオーラに包まれた潤也はゆっくりと翔に歩み寄る。

「僕が相手になるよ。その剣で切れるものなら…」
「慌てるんじゃないよ、風竜。地竜王は君じゃないから」
「だから僕が相手になると言っている」
「…マジ?」

 翔は潤也の顔を見つめる。それからクックッと笑い始める。

「君はまだ半覚醒のままなんだね。僕が誰だか分かってる?」

 言外に相手にならないとの意味を含める。

 が、潤也はそれを聞くつもりはなかった。

 それに気付いて、翔の方が少し眉を吊り上げる。

「仕方がないなぁ。仲間を失うのは少し惜しい気がするけど」

 翔はつぶやいて、ゆっくりと手にした銀剣を振り上げる。

 はっとする一同。

 その瞬間、潤也のオーラが増し、その姿がかすれる。

「ちょっと、ちょっと待ってよ」

 止めに入ったのは杳だった。

 翔と潤也の間に割って入り、翔を睨み据える。

「一体何事だっていうんだよ。物騒にもこんな剣を振り回して、いつまでも不良なんてやってんじゃないよ」

 翔は、杳の台詞にクスリと笑ってみせる。

「何がおかしいんだよ?」


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