第 2 章
宝玉の戦士
-3-

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 喫茶店を出て、先程と違うものを感じて、紗和は立ち止まった。

 同じく違和感に気付いたのか潤也も、杳の腕を取り、辺りの気配に目を走らせた。

「どうかした?」

 二人の様子に、杳も里紗も小首を傾げてみせる。

 違和感の原因はすぐにつかめた。人が、いないのだった。

「またか」

 潤也がつぶやく。

「いいかげんに、僕達を付け回すの、やめてくれないか?」

 しかし彼の声に応えてビルの隙間から姿を現したのは、先程の少女ではなかった。

「残念だけど、お会いするのはこれが初めてよ」

 笑ってそう言う少女の背には、薄紫色のオーラが見えたような気がした。

「誰だよ、あんた」

 その彼女の持つものが好意ではないと気付いて、杳が一歩踏み出す。

 が、その杳を圧し止めたのは潤也だった。

「待って、杳。彼女、ヒトじゃない」
「えっ?」

 ピクリと彼女の眉が吊り上がり、身にまとう光がわずかに増す。

「あらら、誰かと思ったら炎竜くんの弟くんね」
「炎竜?」

 潤也は口の中で繰り返す。どこかで聞いた名だと思った。

「それで貴方達のどなたかしら、地竜王は」
「は?」

 四人まとめて頭上に疑問符を飛ばし、互いに顔を見合わせた。

「何のことだか知らないけれど、人違いしてるんじゃないですか?」

 潤也の口調は柔らかかったが、警戒の色は隠せない。彼女の正体が、何となく知れたような気がしたのだった。

「つい2時間程前、地震が起こったわ。貴方達の誰かが引き起こしたものよ。違う?」
「そんなことできるわけないだろ。あんた、ちょっとキレてんじゃない?」

 杳だった。潤也はこめかみを押さえながら、杳の腕を引いた。

「とにかくかかわらない方がいい。杳、逃げよう」

 が、方向転換した先に別の、その少女と同じオーラを持つ少年が立っていた。

「雪乃、この四人の中の誰かには違いないのか?」
「天竜王がそうだって言うんだから、そうなんでしょ? とりあえず、ここでは何だからご同行願いましょうか」

 言ってその少女――雪乃は、潤也達に手招きする。

「あたし達には関係無いみたいだから、紗和、帰ろうか」

 里紗はそう言って、くるりときびすを返そうとする。と、どこから現れたのか、もう一人その里紗の腕をつかむものがいた。

「手間は取らせない。しばらく付き合ってもらおうか」

 ただ、見目が良かっただけなのである。止めようとする紗和を振り切り、里紗は二つ返事でOKしてしまった。

 そして加えて言うことに。

「紗和、あんたもついて来なさいね」

 紗和には、口出しの権利はなかった。もう、勘弁して欲しかった。

「行く前に、答えてもらいたいことがある」

 潤也は雪乃に向かう。

「さっき僕を見て、炎竜の弟って言ったよね。その炎竜って、もしかして結崎寛也のことじゃ…」
「あら、よく分かったわね」

 さらりと言ってのける雪乃に、潤也は駆け寄る。

「だったらヒロが、兄がどこにいるのか知っているんだね。教えてくれないか?」
「さあ、知らないわ。自分のうちへ帰るとは言ってたけど、とても帰れないわよね」

 雪乃の言わんとする意味が、潤也にはよく飲み込めなかった。ぼんやり考えようとすると、さっきの少年に背中を押された。

「おまえらに会わせたい人がいる」

 言われて半分引きずられるようにして、4人は雪乃達の後に続いた。


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