第 2 章
宝玉の戦士
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「あー、ちょっと、ちょっと」
洞窟から出ようするとバタバタと走り寄る者がいた。露だった。
「オレも帰るよ。こんなとこにいてもつまんねぇもん。それよか、この際だから空中遊泳して帰ろうよ」
「それじゃあ、そういうことで」
露の後に続くものが他にもいた。
それもそうだろうと寛也は思う。雪乃の言っていることは普通ではないから、ついていける訳がない。
それにしても寛也と同じように抜ける人間が合計4人もいたことに多少の文句をつけたかった。
同じ意見ならば一緒になって反発してくれればいいものを。
これだから世の中悪くなる一方なのだと、普段の自分を棚上げにして、口の中で毒づく。
が、その反面、雪乃に賛同するものが翔を含めて3人いるということに対しても寛也は軽い目眩を覚えた。
集まっていたのは殆ど同年代と思われる。常識と非常識の判断できぬ年でもあるまいし。
などと、潤也が聞いたら人のことが言える立場かと指さして笑い出すだろうことを考えながら、寛也は彼らを背にした。
「言い忘れてたけど」
洞窟を出る寸前、思い出したように翔が声をかけた。
「僕達の邪魔はしないように」
剣をちらつかせれば、誰でも思いどおりになると思っている所が、寛也には気に入らなかった。
言い返してやろうかと一歩足を踏み出した時、すっと寛也の肩を掴む者がいた。
「やめておけ。怪我するだけだ」
そう小声で耳打ちしたのは静川聖輝(しずかわせいき)と名乗った大学生。落ち着き払った様子で寛也を見下ろしている。
確か彼は青い珠を持っていたはずだから水竜。
なるほどねと、寛也は納得して背を向ける。
「グッドラック、もう会いたくないね」
そう言って出る寛也の耳に、雪乃のものか、くすくす笑いが聞こえて来た。
* * *
「なーんか、変なヤツばっかりだったよな」
洞窟を出て、初めて口を開いたのは露だった。話しかけた相手は寛也。
「竜だの、征服だの、何考えてんだか」
「だけどあいつら、少なくともあの雪乃って人とあのチビ、本気だった…」
横から会話に加わって来たのは、天野松葉(あまのまつば)と言う恰幅の良い少年。彼も寛也から言えば一つ年下になる。
同い年と聞いたためか露と意気投合した風に、洞窟の中であっても時折冗談を交わしていた様子だった。
「危ないよな、あれってナントカに刃物って言うんじゃない?」
言って露は、カラカラと笑い出した。
が、寛也には笑えないものがあった。
記憶に残る数日前の出来事。
雪乃こと華竜が学校に現れ、その尾を一振りしただけで大破してしまった校舎。
あのようなことをあいつらは本気でするつもりなのだろうか。
華竜――本来戦闘能力を備えていないはずの彼女であっても、それ程の力を持っている。
天竜王が本気で動けば、彼女の言うとおり人界征服だとて不可能ではないかもしれない。
「お前、バカなことを考えているんじゃないだろうな」