第 2 章
宝玉の戦士
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露は臆する事なく言う。
「今時世界征服なんてはやんないよ。第一、力づくなんてカッコ悪い」
ふん、と雪乃は鼻先で笑ってみせる。
「じゃあ、カッコイイやり方っていうの、見せてもらいたいわね」
「その手には乗んないよ。オレ、信じないことはしない主義なの」
露はそう言ってペロリと舌を出す。
それを見る雪乃の白い顔には、ありありと怒りの色が浮かぶ。が、すぐにそれも鎮めた。
「分かったわ。それじゃあ残りの二人、捜して来ましょう」
雪乃は肩まである長い髪を優雅に掻き分けると、うっすらと笑顔を浮かべて見せる。
「へー、どうやって?」
露はさも興味ありそうにして見せる。
が、それも冷やかしの類いであろうことは周囲の誰もが気付くことだった。
とはいえ、関心はある。
残り2人は雪乃の珠玉の呼びかけには応じなかった。
寛也のように導かれて目覚めたばかりではないが、雪乃のした方法のように、お互いがお互いを感知し合う能力が備わっているらしい。
にも拘わらず、その存在を掴むことができなかった天竜王と風竜。
どうやって捜したものか。
「竜王ってからには、貴方にはそのくらいの力があるでしょう」
雪乃の期待したのは、翔だった。
しかし翔はその雪乃をちらりと見遣っただけで、プイッとそっぽを向く。
「その逆なら分かるだろうけど、僕に封印された地竜王の居場所がつかめるものか」
天と地と双竜王は、竜神達を統べる王として古来より存在していると言う。
が、その役割はそれぞれに異なり、天竜王が天を駆け、戦の折り先頭切って剣を奮う大将であることに比して、地竜王は陣を固め、結界を張る守りの将である。
それぞれにその持つ力に秀でたものがある分、劣る部分もあるわけで、多少の術を身につけた――とは言え他の者よりは秀でたそれであるが――天竜王であろうとも、随一の力を持つ地竜王の封じた印は解けるはずもなかった。
「それよりも風竜をおびき出す方が早いな。多分僕達と同じように覚醒している頃だ。その壁画が本当に予言であるならね」
翔はそう言って、自分の剣へと目を落とす。
壁画には竜剣は二本描かれている。
が、今、翔が手にしているのは、たった一本の銀色に輝く剣だった。
あと一本はどうしたものか、翔は剣の鞘をコツンと蹴飛ばした。
そんな翔に雪乃は興味深そうな顔を向ける。
「どうやって捜すの?」
「簡単さ、炎竜の炎であぶり出せばいい。日本列島灰にすればすっ飛んで来るよ、風竜ならばね」
いきなり矛先が自分に向けられて、寛也はギョッとする。
「冗談、何で俺がそんなこと…」
「おもしろそうね」
寛也は雪乃をにらみすえる。
凶暴な性格をしたヤツだと、寛也の中で警戒音が鳴る。
こんな奴らに付き合っていてはいけない。ろくなことにはならないだろう。絶対量の少ない理性が、そう判断する。