第 2 章
宝玉の戦士
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「まあ、まあ、ハデなことしちゃって」
ようやくのこと地上へはいずり出た途端、頭上からそう声が聞こえてきた。見ると偶然にも、里紗が潤也を従えて立っていた。どうやってたどり着いたものか、紗和は首を傾げてみせるが、杳は当然のように気にした様子もなかった。
「大丈夫かい? 怪我は?」
潤也が手を貸してくれ、紗和と杳の二人は、お天道様のもとへ出た。
「平気」
杳は屈伸運動をしてみせる。
ホッとした顔の潤也に、片思いっぽいなと、紗和は直感した。
「でも、どうでもいいんだけど…これってやっぱり、逃げたほうがいいんじゃないかなぁ」
ふと耳に入ったクラクションの音に、紗和はようやく辺りの状況を認識した。
そこは道路のど真ん中だった。
* * *
「で、これからどうするの?」
ようやく警察の追っ手を逃れた四人は、手頃な喫茶店を見付けると、そこへ転がり込んだ。
各々に好みのものを注文した後、最初に口を開いたのは、里紗だった。
彼女の瞳には、明らかに興味本位の色が漂っているのを、紗和は溜め息をつきながら眺めていた。
「この近くにオレの従兄の下宿があるんだけど、そこへ行こうと思っている。ま、どうせ昼間はいないから、それまで時間を潰すつもりだけど」
「なーんだ。二人してラブホテルへでもしけこむのかと思ったら」
いきなり椅子から転げ落ちたのは潤也。
その隣で杳はキョトンとした表情をし、紗和はもうひとつ溜め息をつく。
「里紗、いい加減にしないと失礼だよ。分かってないとは思うけど、僕らは初対面なんだよ」
「そんなもの気にしているの、あんただけよ」
普通は誰でも気にするものだと言いかけて、紗和は諦める。
所詮言ったところで聞く耳を持つ姉ではないと、十余年の人生でしっかり学習している。
「すみません。姉はこういう性格だけど、悪気はないんです」
「いえ、お互い様です」
起き上がりながらやっとの思いで潤也はそう答えた。