第 2 章
宝玉の戦士
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紗和と里紗は、一つ違いの姉弟である。
里紗が4月生まれ、弟の紗和は早生まれの3月。生まれは一年違うものの、同じ年に学校へ上がることとなってしまった。
まだ幼い頃は、一つ違いと言えば姉は姉であった。
が、いつか追い越してしまった背のように、最近では弟の紗和の方が、里紗の保護者となっていた。
姉は姉で、追い付き追い越して行った弟に不満もあったのだろう。
時折、子どもじみた愚行を企てていた。今回のも、もしかしたらその一環かも知れなかった。
修学旅行中、降り立った羽田空港で、里紗は行方不明になったのだった。
北海道から東京行きの飛行機には、確かに乗っていた。騒がしい里紗の姿を誰もが目撃していたので間違いなかった。それなのに、飛行機から降りた時には、里紗の姿は忽然と消え失せていたのだ。
どこでいなくなったのか、誰一人気付かなかった。
先生達でしばらく捜したが見つからず、次の日程も詰まっているからと、一応そのまま出発することになった。
ただし、宿舎の名前さえ分かっていないだろう里紗を、そのままにしておくわけにもいかなかず、仕方なく、クラス委員でもある紗和が、残ることとなったのだった。
散々捜して、沖縄行の飛行機の搭乗口で、里紗は発見された。どこをどう間違えたら、そんな場所へ迷いこめるのか。
見つけた時は、さすがに、あきれ果てて言葉もなかった。
その里紗を連れて、紗和は列車を乗り継いで、今日宿泊することとなっている旅館へ向かっている途中だったのだ。
そんな自分の境遇を哀れみながら、ふと、目を向けた先に、紗和は先程の「少女」を見付けた。列車の出口近くに立って、窓の外に目を向けている。
里紗の先程の言葉のお陰で、つい意識してしまう。何よりも、あの深い瞳が、紗和の気持ちを揺らせていた。
よほど不躾にでも見ていたのだろう、連れの少年の方が紗和の視線に気付き、妙な顔色を見せた。
そして耳打ち。
途端、「少女」が紗和を振り返った。