第 1 章
竜神目覚めるとき
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 つたを掻き分け、明るい外へ顔を出す。少し目が痛かった。

「そろそろ降りようか、日の暮れる前に…」

 言いかけたとき、潤也の肩に小石が落ちて来た。何げなく見かけたそこに――。

「あぶないっ!」

 潤也は杳に飛び付き、二人は後方へと倒れ込む。その後一瞬の間もなく、杳の立っていた所に直系二メートルはあろうほどの岩が落ちて来た。ぱらぱらとその破片が二人の身体に当たる。

「何?」

 杳が驚きの声を上げる。見上げた山の上には何の影も見当たらなかった。

「こんな物、勝手に落ちてくるなよ」
「誰か…人がいたよ」

 潤也はゆっくりと起き上がろうとしながら言う。

 彼は確かに見たのだった。崖の上にいた二人の人影を。

「じゃあ、さっきの…」
「さっきのって?」
「気付いてなかった? オレ達、ダムの辺りからずっと誰かにつけられてた」

 さっぱり気付いてなかった。

 が、潤也は杳の不審な行動には思い当たった。やたらと辺りをきょろきょろ見回してみたり、黙り込んでいたかと思うと、いきなり先へ進もうと言ってみたり。

 気付いているなら言ってくれるのが親切と言うものではないかと潤也は思った。が、口に出しては言わなかった。その代わり立ち上がろうとしてうめき声が口から出た。

 左足に激痛が走ったのだった。

「どうしたの?くじいた?」

 見かけとは180度違って、中身はどうやら無茶苦茶大雑把にできているらしい。杳は潤也の左足をつかむと、無造作に持ち上げたのだった。再び潤也の口から悲鳴がもれる。

「あ、大丈夫だ。骨は折れてないみたい」
「あのね…」

 それでも手を貸してくれたのだからこれ以上文句は言えなかった。


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