第 1 章
竜神目覚めるとき
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 しばらく沈黙が続いた。

 それを破ったのはやはり杳だった。

「ここまで来たけど…翔くん達、ここにいるのかな」

 いきなり力なくそう言った杳。潤也の方がびっくりしてしまった。

「何言ってんだよ。手掛かりがあるかも知れないって言ったのは君の方じゃないか」
「そりゃあ、思いつく所って言ったら、ここくらいだったから」
「いなくてもともとだよ」

 潤也は言って笑って見せる。

 が、潤也自身不安でもあった。何の手掛かりもないので杳の言うとおりここまで来てしまったが、これが単なるムダ足となった場合、次はどうすればよいのか見当もつかなかった。

「とにかく行ってみるしかないよ。ダメならそれから何か考えよう」

 杳の背中をポンと叩き、潤也は自らをもそう励ました。

「もうひと頑張りだよ」

 そんな潤也を見あげて、杳は小さく笑って見せた。


   * * *


 洞窟の中は真っ暗だった。

 蔓草が生え放題になっているのを、手に引っ掻き傷を作りながら掻き分け、中に押し入る。

 持って来た懐中電灯を照らすと、濡れた岩肌が見えた。

「湿っぽいな」

 潤也のつぶやきに、杳は返事もせず奥へ進む。

 洞窟はあまり大きなものではなかった。高さはせいぜい2メートルといったところで、幅は二人が並んで歩ける程度だった。側壁は地下水だろうか、水がポタポタ這うように流れ落ちていた。そのせいか足元は濡れ、とても歩きにくい。

 そして行き止まる。入り口から20メートルばかり歩いた程度である。そこに部屋のようなものがあった。

「防空壕かな」

 潤也の冗談ともつかない独り言を無視して、杳は光を辺りの壁に向けてみた。

「これだよ」

 光度を高くして杳は後方へ下がる。懐中電灯は壁一面を照らし出す。


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