第 1 章
竜神目覚めるとき
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「伯父さん達のことオレの知っているのは、他殺らしいっていうことくらいだよ。何も隠してなんかいないよ」
「うそだよ」
「本当だってば」
「信じないよ、杳兄さんの言うことなんて。僕のことさえ信じてくれないんだから」

 翔は言うとくるりと杳に背を向ける。

「翔くん…?」
「連れてくるよ、杳兄さんの前に、あの竜を」

 そう言う翔の体から銀色に光るものが広がっていく。はっとして杳が翔の肩をつかもうとする。が、その手は翔に届く前に、そこに壁でもあるかのように止まってしまった。そして杳の震えた声。

「翔くん、それ…」

 翔の手にいつの間に握られていたのか、銀色の月明かりよりもはるかにまばゆい光を放つ一振りの剣があった。

 潤也も事の成り行きは理解できないものの、いきなり物理的法則を無視して現れた剣に目を丸くした。

 剣は翔の体からから放たれるオーラと同じ色をしていた。そのためあたかも彼の体の内のエネルギーから作られたもののように思われた。

 その時だった。

 空には一片の雲も見られないにもかかわらず、天からいかづちが降って来た。

 一瞬にしてこの世を白一色に変えたかと思うと、そのいかづちは翔の剣めがけて落雷した。

 少し離れて立っていた潤也の耳に、落雷のわずかな衝動と共に、誰のものともつかない悲鳴が聞こえて来た。

 そして潤也が目を開けた時、相変わらずの月明かりと、地面のわずかに焦げた跡。そして、そこに横たわる杳の姿が見えた。


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