第 1 章
竜神目覚めるとき
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「翔くん、随分探したよ」
翔は杳に拗ねたような表情を向ける。
「さあ、もう帰ろう」
「信じてくれる?」
翔は上目使いをしながらそう聞く。
「見えないならそれでもいいよ。だけど信じてくれる?僕の言うこと」
眉をしかめる杳を、翔は心配そうに見上げる。
黙っていられなくて、つい潤也は口を挟んでしまった。
「その子の言っているのは本当だよ」
潤也の存在に初めて気がついたかのように、杳は振り返った。
潤也は心なしか、自分の頬の赤くなるのを覚えた。
「あ、あの、僕……」
振り返ったのはほんの数秒。黙ったまま、じろりと睨むように見て、杳はそのまま潤也を無視するように、翔に向き直る。
「信じると言ったら帰る?」
翔の顔が少し明るくなる。が、次の杳の言葉に、すぐに元に戻る。
「言うのは簡単だけど、オレは信じたくないんだよ」
「どーいうこと?やっぱり杳兄さんにも見えてるんだ?」
「…いや」
間をおいて、首をふる。
「信じる気なんてないよ」
「杳――」
「それで翔くんが納得しないっていうのなら、引きずってでも連れて帰る」
「僕の気持ちなんてどうでもいいわけ?」
一瞬さすがに杳も返答に困ったようだった。が、次に出された言葉は横で聞いていた潤也でも、少しムッと来るものがあった。
「…そうだよ」
言われて翔は杳をにらみ返した。
「さあ翔くん、帰ろう」
翔は腕を取ろうとする杳の手を振り払う。
「もういいよ。信じないって言うなら、現物を杳兄さんの前に引っ張って来てやるから」