第 1 章
竜神目覚めるとき
-1-
6/10
「ジュン、おいジュンってば」
ぱしぱしと頬をはたかれて、潤也は目を覚ました。
眩しい日差しが目に飛び込んできた。その日差しを遮って、陰ができる。
寛也が顔を覗かせていた。
「あれ?」
「大丈夫か?」
潤也ははっとして跳び起きる。
――ここは一体…。どうしてこんなところに…。
見回すと、そこには巨大な瓦礫の山があった。鉄筋とコンクリートが崩れた跡のようだった。
見覚えがある。
瓦礫の下に見える机や、椅子。
「学校ーっ?」
潤也は驚いて、寛也の顔を見る。
「俺に理由なんて聞くなよな。こっちが知りたいくらいなんだから」
そう言って、寛也は崩れ落ちてしまった校舎に目をやった。真剣な横顔が、見たことがないくらい厳しい色を浮かべていた。
その横顔に聞く。
「あの竜が壊したの?」
「竜?」
寛也は振り返って、驚いた顔で聞き返す。
「何だよ、それ」
「僕は見たよ。紫色と赤色の二匹の竜を」
寛也は、少し黙って、それから否定の言葉を口にする。
「おいおいおい、しっかりしてくれよ。おまえ頭打っておかしくなったのか? 竜なんているわけねぇだろ。今朝の俺の話で、気ぃ失ってる間に、夢でも見てたのか?」
「でも…」
「誰もそんなもの見ちゃいねぇよ。聞いてみな」
潤也はそう言った寛也を見上げる。
たぶん誰も気付かないだろうが、潤也には寛也がいつもと違っていることが分かった。どこがどうというのではないが、雰囲気が、いつも彼が自分のものとして持っていたものが、うかがえなかった。
その代わりにあるもの。
どこか、強い力を感じた。
と、寛也が何げなく振り返る。
「立てるか?」
そう言って差し出した手を握って、潤也にははっきり分かった。
「ヒロがあそこから助けてくれたの?」
そう思った。
潤也の言葉に、寛也は黙って横を向いた。
* * *